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炎症:MAFBは虚血性脳卒中後の過剰な炎症をMSR1を介したダメージシグナルの排除促進によって防止する

Nature Medicine 23, 6 doi: 10.1038/nm.4312

組織傷害に伴ってダメージ関連分子パターン(DAMP:damage-associated molecular pattern)が産生されると、無菌的な炎症が惹起される。しかし、炎症が収束に至る機序については明らかでない。我々は、HMGB1(high-mobility-group box 1)、ペルオキシレドキシン(PRX)、S100A8やS100A9といった一般的なDAMPが、in vitroでクラスAスカベンジャー受容体であるMSR1やMARCOを介して細胞内に取り込まれることを明らかにする。梗塞後のマウス脳では、DAMPの細胞内取り込みは主にMSR1を介していた。実験的脳梗塞を発症させて3日目のマウス脳梗塞巣に浸潤した骨髄系細胞ではMSR1の発現レベル上昇が見られ、この上昇は転写因子であるMafbに依存的であった。脳梗塞巣に浸潤する骨髄系細胞でMsr1Marcoの両方、あるいはMafbを単独で欠損させると、マウスモデル脳梗塞巣でのDAMPの除去が障害されて、炎症はより重症化し、神経傷害も悪化した。レチノイン酸受容体(RAR)のアゴニストであるAm80は脳梗塞巣に浸潤した骨髄系細胞のMafb発現を上昇させ、その結果、MSR1の発現が増強された。脳梗塞マウスモデルでは、Am80は発症24時間後に投与した場合でも治療効果を示した。我々の研究結果は、組織傷害によって惹起される無菌性炎症の収束にDAMPの排除が関わっているという細胞機序を明らかにするものである。

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