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糖尿病:Foxo1は肝臓でミトコンドリア機能とインスリンシグナル伝達を統合する

Nature Medicine 15, 11 doi: 10.1038/nm.2049

2型糖尿病は、グルコースおよび脂質の代謝機能不全を特徴とする複合疾患である。肝臓のインスリン抵抗性は特に、空腹時および食後の糖耐性調節不全を惹起し、全身性脂質異常症および非アルコール性脂肪肝症の発症を促進することから、2型糖尿病の発症原因となる。ミトコンドリア機能不全はインスリン抵抗性と密接な関係があり、糖尿病進行の一因となっている可能性がある。今回我々は、以前に作製したIrs-1(insulin receptor substrate-1)およびIrs-2をコードする遺伝子の欠失により肝臓がインスリン抵抗性を示すマウス(本論文中では二重ノックアウト(DKO)マウスと呼ぶ)を用い、インスリン作用の調節異常とミトコンドリア機能との間の分子的関連を明らかにした。DKOの肝臓では、呼吸鎖複合体IIIおよびIVを破壊し、NAD+/NADH比およびATP産生を低下させるヘムオキシゲナーゼ-1(Hmox1)を始めとして、フォークヘッド型転写因子O1(Foxo1)のいくつかの標的遺伝子の発現が上昇した。DKOの肝臓では、Ppargc-1α(peroxisome proliferator-activated receptor-γ coactivaotr-1α)の発現も上昇したが、これはアセチル化されていて、ミトコンドリアの代償的な生合成や機能を促進することはなかった。DKO肝臓で肝細胞のFoxo1を欠失させると、Hmox1発現およびNAD+/NADH比が正常化し、Ppargc-1αのアセチル化が低下してミトコンドリアの酸化的代謝および生合成が回復する。したがって、Foxo1はインスリンシグナル伝達とミトコンドリア機能を統合しており、Foxo1の阻害によりインスリン抵抗性および代謝症候群の際の肝代謝が改善されると考えられる。

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