新たな抗生物質で耐性菌を狙い撃ち
薬剤耐性菌による感染症は公衆衛生への差し迫った世界的な脅威であり、感染者の死亡につながるケースが増えている1。特に懸念されるのは、「グラム陰性菌」によって引き起こされる感染症である。というのは、グラム陰性菌は内膜と外膜の両方に包まれているため、ほとんどの抗生物質は透過が難しいのだ2,3。特にカルバペネム耐性Acinetobacter baumannii(CRAB)と呼ばれる抗生物質耐性のグラム陰性菌は、治療が難しく、米国食品医薬品局(FDA)は50年以上もこうした有害なグラム陰性菌に対する新たなクラスの抗生物質を承認していない。CRAB感染の治療選択肢が減少し続けるにつれ、死亡率は上昇しており、死亡率は侵襲性感染で約50%に達するとの推定もある4。このほど、待望の治療薬を開発する取り組みに進展があり、2つの研究チームにより、Nature 2024年1月18日号にそれぞれ報告された。1つは、ロシュ社(スイス・バーゼル)のClaudia Zampaloni、Patrizio Mattei、および同社とシックスピークス・バイオ社(SixPeaks Bio、スイス・バーゼル)のKonrad Bleicherらの研究チーム(566ページ)5で、もう1つはハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)のKaranbir S. Pahilおよびハーバード大学医学系大学院(米国マサチューセッツ州ボストン)のMorgan S. A. Gilmanらの研究チーム(572ページ)6だ。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 4
DOI: 10.1038/ndigest.2024.240446
原文
New antibiotic targets a drug-resistant bacterium- Nature (2024-01-18) | DOI: 10.1038/d41586-023-03988-2
- Morgan K. Gugger & Paul J. Hergenrother
- 共にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)に所属
参考文献
- Antimicrobial Resistance Collaborators. Lancet 399, 629–655 (2022).
- Silver, L. L. Bioorg. Med. Chem. 24, 6379–6389 (2016).
- Lewis, K. Cell 181, 29–45 (2020).
- Du, X. et al. Am. J. Infect. Control 47, 1140–1145 (2019).
- Zampaloni, C. et al. Nature 625, 566–571 (2024).
- Pahil, K. S. et al. Nature 625, 572–577 (2024).
- Theuretzbacher, U., Blasco, B., Duffey, M. & Piddock, L. J. V. Nature Rev. Drug Discov. 22, 957–975 (2023).
- Guenther, A. et al. Open Forum Infect. Dis. 10, ofad500.1749 (2023).
- Ryan, M. D. et al. J. Med. Chem. 64, 14377–14425 (2021).
- Richter, M. F. et al. Nature 545, 299–304 (2017).
- Geddes, E. J. et al. Nature 624, 145–153 (2023).
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- Miller, R. D. et al. Nature Microbiol. 7, 1661–1672 (2022).
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- Beceiro, A. et al. Antimicrob. Agents. Chemother. 58, 518–526 (2014).
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