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思考そのものが腫瘍増殖を促進する仕組み

よく見られる成人脳腫瘍の一種である悪性神経膠腫(こうしゅ)は例外なく致命的で、有効な治療法はほとんどない。この腫瘍は中枢神経系にのみ見られるが、悪性神経膠腫細胞とヒト脳にある860億個のニューロンとの相互作用については解明が進んでいない。これは特に重要な意味を持つ。悪性神経膠腫の患者の大半は進行性の認知機能低下を生じ、死に至る最期の数カ月は生活の質(QOL)が奪われるためだ1。このほど、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)のSaritha Krishnaら2が、悪性神経膠腫は、脳の神経回路を変化させることによって増殖することができ、宿主から認知機能を奪って最終的に宿主を死に至らしめることを、Nature 2023年5月18日号599ページに発表している。これらの知見は、神経膠腫の治療に対する根本的に新しいアプローチにつながる可能性があり、患者の認知機能低下を抑制する手段を提供するかもしれない。

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翻訳:古川奈々子

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230845

原文

How thought itself can drive tumour growth
  • Nature (2023-05-18) | DOI: 10.1038/d41586-023-01387-1
  • George M. Ibrahim & Michael D. Taylor
  • George M. Ibrahimは、トロント小児病院およびトロント大学 (共にカナダ・オンタリオ州)に所属。Michael D. Taylorは、ベイラー医科大学およびテキサス小児病院 (共に米国テキサス州ヒューストン)に所属。

参考文献

  1. Sinha, R., Stephenson, J. M. & Price, S. J. Neurooncol. Pract. 7, 131–142 (2020).
  2. Krishna, S et al. Nature 617, 599–607 (2023).
  3. Vanderhaeghen, P. & Polleux, F. Nature Rev. Neurosci. 24, 213–232 (2023).
  4. Talacchi, A., Santini, B., Savazzi, S. & Gerosa, M. J. Neurooncol. 103, 541–549 (2011).
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