マラリア原虫が雄になる仕組み
原生動物の寄生虫である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)がヒトに感染すると、熱帯熱マラリアを引き起こす。熱帯熱マラリアは、ヒトのマラリア感染症の半数以上の原因であり、その死亡例のほとんどを占める。マラリア原虫の生活環は複雑であり、宿主がヒトであるか蚊であるかによって異なっている。特に、性決定はヒトの赤血球内に寄生したマラリア原虫の生活環の、性分化についてのたった2つの運命決定ポイントを経ることで成し遂げられる。1つ目は、無性複製のサイクルを継続するか、あるいはヒトから蚊への伝播を可能にする生殖母体(ガメトサイト、配偶子母細胞ともいう)と呼ばれる有性形態へ分化する過程に進むのかを決定するポイントである。2つ目は、雄または雌のどちらの生殖母体に分化するかを決定するポイントである。一方、生活環(宿主がヒトと蚊で分けられる)の他の段階は全て、次の段階に進むしか選択肢はない。このほどモンペリエ大学およびCNRS(フランス・モンペリエ)のAna Rita Gomesら1は、マラリア原虫の雄の性が決定される仕組みについて長年の謎を解いたことをNature 2022年12月15日号528ページで報告している。
全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。
本サービスでは、サイトご利用時の利便性を向上させるためにCookiesを使用しています。詳しくは、シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社の「プライバシー規約」をご覧下さい。
翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 3
DOI: 10.1038/ndigest.2023.230346
原文
How a malaria parasite becomes a male- Nature (2022-12-15) | DOI: 10.1038/d41586-022-04167-5
- Elisabet Tintó-Font & Alfred Cortés
- 共にバルセロナ大学(スペイン)に所属 Alfred Cortésはカタルーニャ高等研究所 (ICREA、スペイン・バルセロナ)にも所属
参考文献
- Gomes, A. R. et al. Nature 612, 528–533 (2022).
- Kafsack, B. F. C. et al. Nature 507, 248–252 (2014).
- Filarsky, M. et al. Science 359, 1259–1263 (2018).
- Tadesse, F. G. et al. Trends Parasitol. 35, 226–238 (2019).
- Silvestrini, F., Alano, P. & Williams, J. L. Parasitology 121, 465–471 (2000).
- Smith, T. G., Lourenço, P., Carter, R., Walliker, D. & Ranford-Cartwright, L. C. Parasitology 121, 127–133 (2000).
- Russell, A. J. C. et al. Preprint at bioRxiv https://doi. org/10.1101/2021.08.04.455056 (2021).
- Jeninga, M. D., Quinn, J. E. & Petter, M. Pathogens 8, 47 (2019).
- Amit-Avraham, I. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 112, E982–E991 (2015).
- Reece, S. E., Drew, D. R. & Gardner, A. Nature 453, 609–614 (2008).
- Brancucci, N. M. B. et al. Cell 171, 1532–1544 (2017).
- Portugaliza, H. P. et al. eLife 9, e60058 (2020).
関連記事
Advertisement