Editorial

ロシアのウクライナに対する残忍な攻撃は不当であり、ロシアは軍事行動を停止すべきだ

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220406

原文:Nature (2022-03-04) | doi: 10.1038/d41586-022-00647-w | Russia’s brutal attack on Ukraine is wrong and must stop

Nature は、ウクライナの研究コミュニティーと連帯し、国際的な学術的知識の交換も引き続き支援する。

民生用インフラへの攻撃は、戦争犯罪の疑いがあるとして調査が行われている。 | 拡大する

Sergey Bobok/AFP/Getty

主権国家であるウクライナに対するロシアの残忍な侵攻により、1週間余りで何千もの人々が命を落とした。2022年2月24日に始まったロシアによる軍事侵攻は今も続いており、罪のない人々や、大学や文化施設などの民生用インフラも攻撃を受けている。ロシアのこうした行為に対し、国連は国連憲章違反だと非難し、国際刑事裁判所は、人道に対する罪や戦争犯罪の嫌疑で捜査を進めている。

Nature は、世界の科学コミュニティーと共に、この恐ろしい侵攻を最も強い言葉で非難し、ロシアにその攻撃を直ちに終わらせることを求める。Natureは、ウクライナの人々、そしてウクライナの研究コミュニティーを支援し、連帯する。

家を捨て、近隣諸国へ避難せざるを得なくなった人々が100万人(この社説の掲載日である3月10日時点)に達し、子どもと女性が大部分を占めた。この人数は、今後数日から数週間で、さらに増えることが予想される(訳註:3月21日時点で国外避難民は350万人を超えた)。容赦ない暴力と苦しみに耐えているウクライナの人々の中には研究者もいる。彼らの多くが、自国を守るために勇敢にも武器を手にした。空爆の続く都市に残って家族の世話をしている人もいる。Nature のインタビューを受けたバシル・ストゥス・ドネツク国立大学(ウクライナ)の科学研究担当副学長イリヤ・ハジノフ(Illya Khadzhynov)は、「研究のことなんて考えていません」と語った。

世界の研究コミュニティーは、素早く集結して、実際に役立つ支援を提供している。#ScienceForUkraine、海外で活動するウクライナ人科学者、グローバルヤングアカデミー(GYA)、英国のCouncil for At-Risk Academics(Cara)などが、ウクライナ以外の大学でウクライナの科学者を採用することを通じた支援の申し出を取りまとめている。

国境を越えて学識を自由に伝えることは、科学の基礎をなすものだ。

一方、ロシアの科学コミュニティーのメンバーもこの侵攻を非難しており、彼らも身の危険にさらされている恐れがある。また、数多くの国内の科学団体や国際的科学団体が、公開書簡や声明を発表して、即時停戦とウクライナへの支援を強く主張している。

ロシア政府は、当然ながら厳しい金融、経済、貿易制裁を受けており、それが研究や高等教育にも及んでいる。デンマークとドイツは、ロシアの研究機関との協力を停止するよう大学に指示し、欧州連合は、資金を提供しているプロジェクトに参加しているロシアのパートナーへの支払いを停止している。

一部の科学者は、全てのロシアの研究を全世界で包括的にボイコットし、科学学術誌に対してはロシアの研究者による論文の受付拒否を求めている。ウクライナで起きていることの恐ろしさを考えれば、こうした要求は理解できる。しかし、Natureは、そのようなボイコットをすることは、利益以上に害をもたらすと現時点では考えており、他の多くの学術誌と同じように、全世界の研究者から投稿された論文について、掲載可否の審査を引き続き実施する。ボイコットは、世界の研究コミュニティーを分断し、学術的知識の交換を制限することになり、いずれも人類と地球の健康と幸福を損なう可能性があると考えられる。世界は、今回の危機やその他の危機に対処するために必要な知識を生み出し続けなければならないのだ。国境を越えて研究や学識を自由に伝えることは、科学と国際関係の基礎をなしており、史上最悪の国際紛争が起こった時でも続けられていた。

またGYAは、今回の侵攻のさなかにあっても、研究コミュニティーにはロシアの学者との科学的協力を維持することを呼び掛け、研究者に対して「戦争による研究者の分断を阻止する」ことを強く求めている。これも当然のことだ。世界の科学アカデミーのネットワークであるインターアカデミーパートナーシップ(IAP)は、今回の侵攻に関する声明の中で、科学が「誰も見捨てない」ことが必要だと明確に示している。

ロシアの侵略に反対する意思は、Nature を含めて科学コミュニティー全体が団結して示さなければならない。そして、実際に示されることになる。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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