News in Focus

COVIDワクチン接種者では後遺症の報告が少ない

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220309

原文:Nature (2022-01-25) | doi: 10.1038/d41586-022-00177-5 | Long-COVID symptoms less likely in vaccinated people, Israeli data say

Freda Kreier

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患に伴う倦怠感やその他の健康問題が、COVIDワクチン接種者では、ワクチン非接種者に比べて起こりにくい可能性がある。

ファイザー社/ビオンテック社のCOVID-19ワクチンの接種準備をしている医療従事者。このワクチンはイスラエルで広く接種されている。 | 拡大する

SOPA Images/Contributor/LightRocket/Getty

新型コロナウイルス感染症(COVID-19;SARS-CoV-2により引き起こされる感染症)に対するワクチンは、「Long COVID」と呼ばれる罹患後症状のリスク低減にも役立つ可能性がある。イスラエルでパンデミック(世界的大流行)初期から2021年11月までにCOVID-19に罹患した人々を調査した研究で示唆された1。現在、同様の証拠が集まってきている。

バル・イラン大学(イスラエル・サファド)の研究者らは、SARS-CoV-2感染歴のある人で、ファイザー社/ビオンテック社のワクチンを少なくとも2回接種済みだった人では、諸症状の報告がワクチン接種を受けていない人に比べてはるかに少ないことを見いだした。実際、ワクチン接種者でSARS-CoV-2の感染歴がない人と比べても、報告はそれより多いとは考えられなかったのだ。なお、この研究をまとめたプレプリント論文1は、まだ査読を受けていない。

Long COVIDを防ぐ効果があることが、ワクチン接種を必要とするもう1つの理由です。

「Long COVIDを防ぐ効果があることが、ワクチン接種を必要とするもう1つの理由です」と、今回の論文の共著者で、同じくバル・イラン大学の疫学者Michael Edelsteinは言う。

SARS-CoV-2感染後に倦怠感や息切れ、集中力の低下などの症状が数週間または数カ月、あるいは数年にわたって持続することがある。こうした衰弱状態は総称してLong COVIDと呼ばれている。入院に至らなかった人からの報告も多く、SARS-CoV-2感染者の最大30%が持続的な症状を示しているとの推定もある(2021年9月号「COVIDが脳にダメージを与える仕組み」参照)。

ワクチン接種は、第一に、接種者の感染を防ぐことによってLong COVIDの発生率を低減させる。他にも理論的には、ブレークスルー感染の際にもウイルスが体内で自由に活動できる時間を最小限に抑えることで、Long COVIDの発症を防止する可能性がある。しかし、これまでのところ、ワクチンがLong COVIDを防ぐかどうかを調べた研究は少なく、また結果はさまざまだったと、エール大学医学系大学院(米国コネチカット州ニューヘイブン)のウイルス免疫学者である岩崎明子は言う。

Edelsteinらは、パンデミックの長期的な影響を調べる調査を2021年7月〜11月に行った。この調査では、2020年3月〜2021年11月にSARS-CoV-2の感染検査を受けた3000人以上を対象に、オンライン質問票を使ってLong COVIDの一般的な諸症状の有無を聞き取った。

研究チームは次に、自己申告によるLong COVIDの各症状の有病率と、ワクチン接種状況を比較した。COVID-19を罹患した人についてワクチン接種者と非接種者を症状ごとに比較すると、ワクチン接種者はワクチン非接種者よりも、頭痛の報告が54%、倦怠感の報告が64%、筋肉痛の報告が68%少ない可能性があることを見いだした。

SARS-CoV-2(赤色)に感染し、細胞死が進む細胞(紫色)。中枢神経系に豊富に存在するアストロサイトに感染することも報告されており、筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)と症状が似ているとの指摘もある。 | 拡大する

NIAID

ワクチンでLong COVIDも予防できる?

ワクチン接種とLong COVIDに関して、同様の研究結果が他からも報告されている。その1つが、ワクチン接種によりLong COVIDのリスクがほぼ半減することを示した英国での研究で、この論文は2021年9月にLancet Infectious Diseases のオンライン版で発表された2。イスラエルでの研究もこれに同調するものだが、Edelsteinは自身らの研究がこれまでで最も「包括的で正確」であると言う。

英国の研究を率いたロンドン大学キングスカレッジ(英国)の老年科医Claire Stevesは、今回のイスラエルのデータがこれまでの知見を裏付けていると言う。「異なる研究計画で相関性があり、同じ結果が得られるというのは素晴らしいことです」と彼女は言う。

英国とイスラエルの両方の研究結果は、ワクチン接種によってLong COVIDのリスクが低減することを示しているが、ワクチン接種者であっても、Long COVIDを発症するリスクはあると彼女は言う。そして、ワクチン接種によってオミクロン株が引き起こすLong COVIDが防げるかどうかはまだ分かっていない。

そうではあるが、これらの知見は励みになると、岩崎は言う。「Long COVIDは深刻な衰弱性疾患です。Long COVIDを防ぎ得るあらゆる対策が、Long COVIDの患者を増やさないためには重要なのです。ワクチン接種を受ける理由がもう1つ増えました」と彼女は言う(訳註:ワクチンに関しては2021年10月号「COVIDワクチンと血栓症:これまでに分かったこと」参照)。

(翻訳:三谷祐貴子)

参考文献

  1. Kuodi, P. et al. Preprint at medRxiv https://doi.org/10.1101/2022.01.05.22268800 (2022).
  2. Antonelli, M. et al. Lancet Infect. Dis. 22, 43–55 (2022).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度