Where I Work

Alessandro Rossi

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2022.220256

原文:Nature (2021-08-16) | doi: 10.1038/d41586-021-02224-z | Exploring ‘the most spooky, weird kind of science’

Josie Glausiusz

Alessandro Rossiは、国立物理学研究所(NPL;英国ロンドン)の計測研究員、ストラスクライド大学(英国グラスゴー)の上級講師および英国研究イノベーション機構(UKRI)フューチャー・リーダーズ特別研究員。

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Alecsandra Dragoi for Nature

私は量子工学者として2つの仕事をしています。2021年4月にこの写真を撮影した英国ロンドンの国立物理学研究所(NPL)では、量子計測学の研究をしています。量子計測学とは、量子物理学の原理に基づく計測法の科学です。写真に写っている装置は希釈冷凍機で、私たちの半導体量子デバイスを0.007Kまで冷却することができます。これは絶対零度(-273.15℃)よりも1℃未満だけ高い温度で、自然界では宇宙のどこにも存在しない温度です。

NPLでの実験では、単位時間に移動する電子の個数が厳密に分かるほどの高い精度で、個々の電子の移動時間を計測しています。この冷凍システムの中で電子を1個ずつ制御することで、極めて高い精度で電流を発生させることができます。もう1つの勤め先であるストラスクライド大学(英国グラスゴー)では、同僚と共に半導体技術を利用して量子コンピューターを開発しています。NPLでの高レベルの電流制御はこの研究にも役立っています。電子を1個ずつ動かすことで、半導体ベースの量子コンピューターのさまざまな部品の間で情報を伝達することができます。

量子コンピューターが利用する量子ビット(キュービット)は、同時に異なる状態で存在することができます。そのため、ある種の計算については、量子コンピューターは古典的コンピューターよりも指数関数的に速く計算することができます。量子コンピューターは個々の原子や分子の間の相互作用を支配する量子原理と同じ原理で動作するため、化学反応のシミュレーションも可能です。

何かが同時に2つの状態で存在したり2つの場所に存在したりできるという概念は直観に反しています。私自身も矛盾の中で生きているような気がします。量子物理学という、最も当てにならず、不気味で、奇妙なタイプの科学を研究している一方で、計測学という、最も信頼性が高く、精密で、再現性のある分野にそれを応用しているのですから。この2つをうまく組み合わせる方法を考えていると、気が遠くなるような感じがします。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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