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地球を観測できる位置にある恒星は2000個以上

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210902

原文:Nature (2021-06-23) | doi: 10.1038/d41586-021-01692-7 | The 2,000 stars where aliens would catch a glimpse of Earth

Alexandra Witze

地球外生命を探すなら、地球が太陽の手前を横切る様子を観測できる位置にある恒星や惑星系に重点を置くべきだ。

太陽に照らされた地球を、宇宙から眺めた想像図。過去や未来に地球が太陽の手前を横切る様子を見ることができる恒星が、明るく描かれている。 | 拡大する

OpenSpace/American Museum of Natural History

天文学者たちは、そう遠くない過去や未来に地球が太陽の手前を横切る様子を観測できるような位置関係になる恒星を2000個以上特定した。これらの恒星を回る惑星に、少なくとも人類と同程度の技術を持つ「宇宙人」が住んでいるなら、理論的には私たちを発見することができるだろう。彼らは、産業革命後の数百年間に地球の大気中の二酸化炭素濃度が上昇したことまで観察しているかもしれない。

2021年6月23日にNature に掲載された論文の分析チームを率いた、コーネル大学(米国ニューヨーク州イサカ)の天文学者Lisa Kalteneggerは、「地球外生命の探索に関する新しい考え方をもたらす研究成果です」と言う。「私たちを観察するのに最適な星は、宇宙のどこにあるのでしょう? どんな星の住人が、私たちを『宇宙人』として見るのでしょうか?」

私たち地球人は、こうした異星人を探すべきだと科学者たちは言う。彼らは既に私たちを発見していて、地球からの通信を受け取る準備ができている可能性があるからだ。

位置を変える恒星

地球が太陽の手前を横切る様子が見える位置にある恒星の研究は、過去にも行われている2,3,4。しかし、恒星の運動まで考慮した研究はこれが初めてだ。広大な空の中で恒星が地球と太陽の両方と一直線に並ぶことができる範囲は狭く、恒星は長い歳月の間に位置を変え、この狭い範囲を出入りしている。科学者たちはこの情報に基づき、人類文明が誕生してからの約5000年間にどの恒星から地球が見えていたかを推定し、これからの5000年間にどの恒星から見えるようになるかを予測することができた。

この研究は、「観測により地球を発見し、その特徴を解明できる可能性が平均よりも高い」星について、天文学者の考察を発展させるものだと、カリフォルニア大学バークレー校SETI研究センター(米国)の宇宙生物学者Sofia Sheikhは評価する。

今回の発見は、恒星の位置を精密に測定して史上最高精度の3次元地図を作成した欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ガイア」によって実現した(2014年1月号「ガイア衛星打ち上げへ」、2016年12月号「11億個の星の地図を公開」参照)。Kalteneggerは、アメリカ自然史博物館(ニューヨーク)の天文学者Jackie Fahertyと協力してガイアの地図を分析し、過去に恒星と太陽との間を地球が横切るような位置関係にあったか、将来、そのような位置関係になる恒星を特定した。

宇宙の恒星の大半は太陽系の公転面とは異なる平面上にあるため、恒星と太陽の間を地球が横切るような位置関係にある恒星はごくわずかだと彼女は言う。ガイアが作成したカタログの中で地球から100パーセク(1パーセクは約3.26光年)の範囲内にある33万個以上の恒星のうち、太陽の手前を地球が横切るのが見える位置関係にある恒星は2034個しかない。そのうちの1715個は過去5000年の間に地球が見える位置関係になったことがあり、残りの319個は今後5000年の間に地球が見える位置関係になると推定されている(「地球が見える位置にある恒星」参照)。2034個の恒星のうち7個は既に惑星を持っていることが分かっているが、さらに多い可能性があり、その中には生命の存在に適した惑星もあるかもしれない。

地球が見える位置にある恒星
そう遠くない過去や未来に、地球が太陽の手前を横切る様子を観測できる位置関係にある恒星は2000個以上あり、その中には、惑星を持つことが分かっているものもある。また、人類が送信した電波が既に到達している距離にある恒星もある。 | 拡大する

銀河系内の異星人がもし地球を探すとすれば、その方法は、地球上の天文学者たちが系外惑星を探すのに用いている「トランジット法」と推定されている。この手法では、遠方の恒星の周りを公転する惑星がその恒星の手前を横切るときに、その恒星の光が規則的にわずかに暗くなる現象を検出する。

格好のターゲット

地球外生命を探す天文学者たちは、今回の研究成果を受けて、地球を見ることができる位置にあり、私たちからの通信を期待しているかもしれない恒星や惑星系に探索を集中することができる。SETI研究所(米国カリフォルニア州マウンテンビュー)の天文学者Seth Shostakは、「獲物がいる場所が分かれば、狩りはずっと楽になりますからね」と言う。

論文著者らは、2034個の恒星のうち、人類が地球上で送信した電波が既に届いていると考えられる近さ(30パーセク以内)にある恒星も75個特定した。これらの恒星の周りに異星人がいれば、既に私たちの様子を見たり聞いたりしている可能性があるので、これらの恒星は格好のターゲットになるかもしれないと、Kalteneggerは考えている。

新たに注目されるようになった恒星もある。例えば、地球から12パーセクの距離にあるトラピスト1(TRAPPIST-1)という恒星の周りには、地球サイズの惑星が7つあることが分かっている。今回の論文の著者らによると、トラピスト1は西暦3663年に地球が太陽系の手前を横切るのが見える位置に来るという(「地球が見える系外惑星を持つ恒星」参照)。

地球が見える系外惑星を持つ恒星
恒星 見え始め 見え終わり 見える期間 時期
ロス128(Ross128) 3057年前 900年前 2158年間 過去
ティーガーデン星(Teegardenʼs Star) 29年後 438年後 410年間 未来
GJ 9066 846年後 1777年後 932年間 未来
トラピスト1 1642年後 4012年後 2371年間 未来

出典:Kaltenegger, L. & Faherty, J. K. Nature 594, 505–507 (2021).

地球外文明が恒星の周りに人工的な「メガストラクチャー」を建設していれば、それが恒星の手前を横切るときに恒星の明るさが一時的に暗くなる現象を地球から観察できるだろう。それによって地球外文明の存在に気付けるはずだと、天文学者やSF作家は指摘している。

また、人類はトラピスト1星系から観察されていることを想定して観測計画を立てるべきだと言う人もいる。マックス・プランク太陽系研究所(ドイツ・ゲッティンゲン)の宇宙物理学者René Hellerは、「彼らが観測できるように、太陽の手前を横切るようなメガストラクチャーを設置することを考えるべきかもしれません」と言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Kaltenegger, L. & Faherty, J. K. Nature 594, 505–507 (2021).
  2. Shostak, S. & Villard, R. Symp. Int. Astron. Union 213, 409–414 (2004).
  3. Heller, R. & Pudritz, R. E. Astrobiology 16, 259–270 (2016).
  4. Kaltenegger, L. & Pepper, J. Mon. Not. R. Astron. Soc. Lett. 499, L111–L115 (2020).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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