Where I Work

Clara Barker

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210652

原文:Nature (2021-01-11) | doi: 10.1038/d41586-021-00024-z | ‘I was no longer pretending or hiding’: a trans scientist finds a lab to call home

Josie Glausiusz

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Nature by Leonora Saunders

私は薄膜材料科学者で、オックスフォード大学(英国)の応用超伝導センターのラボマネジャーです。靴底が水色・ピンク・白の「トランスジェンダー・プライド・フラッグ」の配色になっていることからお分かりいただけるように、私はトランスジェンダーです。私はずっと、トランスジェンダーであることをカミングアウトすれば、科学者としてのキャリアは台無しになると思っていました。けれどもオックスフォードに来て初めて、本当の自分になることができました。偽ったり隠したりすることなく、ありのままの自分を受け入れてもらえたことで、研究室にいることを楽しめるようになりました。

私たちは新しい超伝導体を作っています。超伝導体とは、非常に低い温度で電気抵抗なしに電流を流せる物質です。熱や光の形でエネルギーを失うことなく、いつまでも電流を流すことができるため、磁気共鳴画像(MRI)装置や、欧州原子核研究機構(CERN;スイス・ジュネーブ近郊)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)などに広く利用されています。

写真は私の研究室で撮影したもので、周りにあるのは薄膜超伝導体を作るためのパルスレーザー堆積装置です。銅、バリウム、カルシウムなどの複合材料に高出力レーザービームを照射し、原子の一部をたたき出します。その原子が真空中を飛んで表面上に堆積し、薄膜を形成するのです。私たちが常に目指しているのは、従来よりも高い磁場を発生させることができる超伝導体を作ることです。

研究室の同僚は、いい刺激を与えてくれます。私が仕事に集中できるのは、彼らが私を受け入れ、1人の科学者として接してくれるからです。オックスフォード大学は、私がここに来た2015年以来ずっと、講演や記事を通じてトランスジェンダーの科学者としての私の物語を共有する場を提供してくれています。これほどの可視性(visibility)を獲得できたことを心から光栄に思っています。

研究室を誰もが自分らしくいられる場所にすることは大切です。そうすれば、科学者は最高の仕事をすることができます。私のTシャツにも書いてあるように、「お互いを愛することを忘れてはならない」のです。

(翻訳:三枝小夜子)

Clara Barkerは、オックスフォード大学(英国)応用超伝導センターのラボマネジャー、材料科学者。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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