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がんを助ける裏切り者、脂質
制御性T細胞(Treg細胞)と呼ばれる免疫細胞は、免疫応答を選択的に低減させるT細胞サブセットである。Treg細胞による免疫応答の抑制は、炎症を促進するT細胞の活性化を抑制することや抗炎症因子を分泌することによって行われる1。このような免疫応答の抑制が重要なのは、自己免疫疾患で起こる機能不全の一種である、自身の体に対する免疫応答の開始を防ぐからである。しかし、Treg細胞は、CD8 T細胞(キラーT細胞としても知られる)など、がんを攻撃する免疫細胞も抑制してしまい、腫瘍にとって利益となる可能性がある。このほど聖ジュード小児研究病院(米国テネシー州メンフィス)のSeon Ah Limらは、腫瘍環境におけるTreg細胞の代謝依存性を特定し、Nature 2021年3月11日号306ページで報告している2。この知見から、Treg細胞が腫瘍環境で機能する仕組みが明らかになった。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 6
DOI: 10.1038/ndigest.2021.210641
原文
Cancer aided by greasy traitors- Nature (2021-03-11) | DOI: 10.1038/d41586-021-00421-4
- Caroline Perry & Ulf H. Beier
- Caroline Perry & Ulf H. Beierは、ともにペンシルベニア大学(米国フィラデルフィア)に所属、Ulf H. Beierはフィラデルフィア小児病院(同)にも所属。
参考文献
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