COVIDは2020年のCO2排出を抑制したが、長くは続かなかった
世界の二酸化炭素排出量は、数十年にわたって徐々に上昇してきた。しかし、新しいデータによると、2020年、COVID19パンデミックによる世界中の社会的・経済的活動の落ち込みによって、世界の二酸化炭素排出量は6.4%(23億トン)減少した。この減少量(図「二酸化炭素排出量の減少」参照)は日本の年間排出量のおよそ2倍だが、多くの研究者は、ウイルスが制圧されたらこの状態は続かないと予想している。
2020年10月に上半期の排出データ が Nature Communications(Z. Liu et al. Nature Commun. 11, 5172; 2020)に報告されたのに続き、今回、2020年の全データがNature に提供された。パンデミックの規模から考えると、「排出量の減少は、既に、予想以上に鈍化しています」と清華大学(中国・北京)の地球システム科学者Zhu Liuは言う。Liuは、今回データを提供したカーボンモニター(Carbon Monitor)という国際プログラムを率いる研究者の1人だ。「パンデミックが収束したら、おそらく非常に強いリバウンドが起こるでしょう」(図「排出量のリバウンド」参照)。
パンデミックの制約の影響を最も大きく受けたエネルギー部門は航空部門であり、2019年に比べ総排出量は48%低下した。
パンデミックにより、気候変動と闘うと確約した各国は、この課題特有の視点があることを認識した。国連環境計画(United Nations Environment Programme)は、産業革命以前の水準から1.5℃以上の地球温暖化を防ぐ(2015年のパリ協定で設定された目標)には、次の10年で世界の二酸化炭素排出量を毎年7.6%ずつ削減する必要があると推定している。
翻訳:藤野正美
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 4
DOI: 10.1038/ndigest.2021.210413
原文
COVID curbed carbon emissions in 2020 — but not by much- Nature (2021-01-15) | DOI: 10.1038/d41586-021-00090-3
- Jeff Tollefson
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