Editorial

リサーチ・マネージャーもまた研究者である

2018年に英国エディンバラで開催された、リサーチ・マネージャーのための国際学会のポスターセッションの様子。アカデミック・アドミニストレーターの中で、自身が扱う課題の学術的な側面に関わる人が増えている。 Credit: Malcolm Cochrane Photography

大学内の研究管理という職種は、30年の間に、世界中の研究者が注目するキャリアパスになった。リサーチ・マネージャーおよびリサーチ・アドミニストレーター(Research Managers and Administrators;RMA)は、かつて大学の研究資金管理を支援することを主な職務としていたが、現在では、研究全体をカバーし、世界的に認知された職業の1つになっている。大学で働くRMAは約2万人いる。そのほとんどが高所得国だが、RMAの数は、低所得国、特にアフリカで増加している。

RMAの役割は、研究の複雑さが増す中で進化を遂げてきた。それに伴い、研究者レベルの資格や経験を持つRMA候補者が増えている。今日のマネージャーやアドミニストレーターには、経理やプロジェクト管理、研究政策などの従来の分野だけでなく、オープンサイエンスや平等と多様性、倫理、パブリックエンゲージメントに関する知識と経験が必要とされる。

現在、RMAの養成講座や資格は、大学やINORMS(研究支援専門の職能団体が形成する国際ネットワーク。アイノームズと発音)に所属する国内や地域の職能団体(20団体)の一部によって提供されている。

しかし、Nature 2021年7月8日号に報告されているように、研究者がRMAと関わる場面で緊張関係が生じることが珍しくない(31ページ「リサーチ・アドミニストレーターという道」参照)。いまだに一部の人々は、大学研究者を「王様」と見なし、RMAを研究支援者程度に考えているのだ。一方、一部の大学では、首脳陣がRMAに、大学研究者の業績評価指標のモニタリングを期待しているが、これは研究者とマネージャーの双方にとってストレスになる場合がある。

その結果、RMAとその職能団体が、「責任ある研究」の実現を推進する主体となりつつある。その上、RMAとその職能団体は、研究の管理・運営に関する学術的な研究を取り入れている。こうしたことは、研究実施の優れた方法や、大学や出版社の責任を追及する上で有効な専門的な基準の確立に役立っている。

例えば、INORMSに所属する機関・団体は、さまざまな大学ランキング表をより公平で透明性の高いものにするため、その改善を目指す取り組みを率先して行っている。また、英国のリサーチ・マネージャーの団体であるARMAは、研究評価における評価指標の使用に関する独立したレビュー(Metric Tideプロジェクト)に関わっている。2021年には、研究管理の専門家が、Journal of Research Management and Administration を創刊した。

こうした展開は歓迎すべきで、RMAは研究事業に欠かせない存在となった。さらに、上述した目標を達成するためには、RMAが研究に積極的に参加することが不可欠だ。研究者とマネージャーは、研究環境をより幸せで生産的なものにするために、お互いに対して同僚として敬意を払い、職務を遂行しなければならない。

翻訳:菊川要

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2021.211050

原文

Research managers are essential to a healthy research culture
  • Nature (2021-07-07) | DOI: 10.1038/d41586-021-01823-0