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太陽に最も近い場所で撮影した太陽のクローズアップ写真

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200907

原文:Nature (2020-06-16) | doi: 10.1038/d41586-020-02136-4 | This photo of the Sun is the closest ever taken

Elizabeth Gibney

太陽観測衛星「ソーラー・オービター」が太陽表面から7700万kmの所で撮影した太陽の写真から、表面で躍動する多数の「キャンプファイヤー」が見えてきた。

太陽観測衛星「ソーラー・オービター」。 | 拡大する

ESA/ATG MediaLab/NASA

このほど、欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)を中心とする国際共同ミッション「ソーラー・オービター(Solar Orbiter)」が、最初の画像を公開した。2020年2月に打ち上げられたこの探査機は、地球からは観測が難しい太陽の極域を撮影し、その環境を調査するために、10種類の観測装置を搭載している。これまでで最も近い場所から撮影された太陽の画像は、コロナのあちこちにある小規模な太陽フレアを捉えていた。科学者たちは、このミニチュアの太陽フレアを「キャンプファイヤー」と呼んでいる。

2020年7月16日に行われた記者会見で、ソーラー・オービターの極端紫外線撮像装置(Extreme Ultraviolet Imager)の主任研究員であるDavid Berghmansは、「最初の画像が送られてきたとき、まず思ったのは『あり得ない』ということでした。こんなに良く撮れているはずがないと思ったのです。私たちの期待をはるかに上回る画像でした」と語った。

ベルギー王立天文台(ブリュッセル)の太陽物理学者であるBerghmansは、声明の中で「太陽は一見、落ち着いているように思うことでしょう。ですが、よく見るとあちこちにミニチュアのフレアがあるのが分かります」と述べている。

地球から見える太陽フレアは、太陽の磁場中の相互作用によって生じると考えられている高エネルギーの爆発現象だが、ミニチュアのフレアの大きさはその100万分の1、もしかすると10億分の1程度しかない。ミッションチームは、この2つの現象が同じプロセスによって引き起こされているかはまだ分からないと言うが、研究者らは、多数の「キャンプファイヤー」の影響が足し合わされることがコロナの温度の高さに寄与しているのではないかと推測している。太陽の外層大気であるコロナの温度は太陽の表面より何百倍も高く、その理由はいまだに解明されていないのだ。

ソーラー・オービターが太陽の表面から7700万kmの所で撮影した太陽表面。矢印は「キャンプファイヤー」と呼ばれるミニチュアのフレア。 | 拡大する

Solar Orbiter/EUI Team (ESA & NASA); CSL, IAS, MPS, PMOD/WRC, ROB, UCL/MSSL

2020年5月30日に極端紫外線撮像装置によって撮影され、7月16日に公開された写真は、太陽の表面から7700万kmの所で撮影された。ちなみに地球は太陽から約1億5000万kmの所にある。NASAのパーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)という大胆なミッションは、さらに太陽に近い軌道を飛行しており、ミッションの中で太陽から620万km未満の距離、つまりコロナの中を通り抜ける予定になっているが、その環境はあまりにも過酷なので、太陽に向けるカメラは搭載していない(2018年10月号「太陽のコロナに飛び込む探査機」、2020年3月号「太陽の秘密に間近で迫る」参照)。また、地上のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡(Daniel K. Inouye Solar Telescope;ハワイ)はソーラー・オービターよりも高解像度の太陽画像を撮影しているが、地球の大気は紫外線やX線の一部を吸収してしまうため、太陽が放射する全ての光を捉えているわけではない。

科学者たちはソーラー・オービターが見せた可能性に大いに期待している。探査機は今後、軌道を切り替え、最終的には太陽の極域を初めて調べることになっている。このミッションのプロジェクト・サイエンティストのDaniel Müllerは記者会見で、「私たちは、太陽にこれほど近い所までカメラを持っていったことはありませんでした。これは、ソーラー・オービターとの長く壮大な旅の始まりにすぎません。2年後には太陽にもっと近い所まで連れていってもらえるのです」と語った。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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