生命科学の研究方法として、「シングルセル(単一細胞)解析」が大きな注目を浴びている。臓器に含まれる細胞を個別に解析していく研究方法であり、細胞集団を解析して平均値を捉えるこれまでの手法では見逃されてきた新しい細胞種、また、これまでにないレベルでの細胞機能を解明できるようになった。この分野で新技術の研究・開発を進める二階堂愛・理化学研究所ユニットリーダーと、今回の完全長RNAの解析技術「RamDA-seq」の開発を担った林 哲太郎研究員たちに話を伺った。
–– 「シングルセル(単一細胞)解析」は、なぜそんなに注目されているのでしょうか。
二階堂: 伝統的な生物学の研究方法では、臓器に含まれる複数の細胞種をまとめてすりつぶし、それを実験に用いました。ところが、ゲノム解析技術などの進歩により、微量の物質を精度よく、しかも高速で計測できるようになり、細胞1個1個を分離して別々に解析することが可能になってきたのです。すると、予想以上に細胞種が多様であること、さらには、同種の細胞であっても個性に大きな違いがあることが分かってきました。そして、細胞集団から平均化したデータでは、細胞個々の特徴や機能を正確に捉え切れないのではないかという疑問が湧いてきたのです。そこで、シングルセル解析が活発化してきました。
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Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5
DOI: 10.1038/ndigest.2018.180522