Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171125
原文:Nature (2017-08-03) | doi: 10.1038/548020a | The race to reveal antimatter’s secrets
欧州原子核研究機構(CERN;スイス・ジュネーブ郊外)の実験棟の高い天井の下では、「宇宙で最も捉えがたい存在」の謎を解き明かそうと、6つの実験チームが競い合っている。お互いの距離は数mしか離れていない。場所によっては上下に重なっていることもある。彼らの頭上には、ショッピングセンターのエスカレーターのように交差する、金属材を支える重さ数トンのコンクリートの塊が迫っている。AEGIS実験チームを率いる物理学者のMichael Doserは、「私たちは常にお互いを意識しています」と言う。彼らの目標は、「反物質」が重力にどのように反応するかを最初に解明することだ。反物質とは物質の鏡像に相当する物質で、自然界にはほとんど存在しない。