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「水の舌」で獲物を捕らえるトビハゼ

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150607

原文:Nature (2015-03-18) | doi: 10.1038/nature.2015.17123 | Fish uses ‘water tongue’ to grab prey on land

Daniel Cressey

水を舌のように使うトビハゼの捕食方法から、初期の陸上動物が捕食のために舌を進化させてきた可能性が示された。

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Anthony Hall/iistock/thinkstock

水陸両生魚類であるトビハゼの風変わりな狩りの方法が明らかになった。アントワープ大学(ベルギー)の生物学者Krijn Michelをはじめとする研究チームが、ハイスピードX線カメラを使って大型のトビハゼPeriophthalmus barbarusの捕食行動を撮影したところ、この魚が陸上で狩りを行う際、口の中に蓄えた水を使って、あたかも舌で丸め込むように獲物を捕らえていることが分かったのだ。この研究成果は、Proceedings of the Royal Society Bに報告された1

今回の結果は、動物の海から陸上への適応の謎を解明する上で、新たな手掛かりとなる可能性がある。2006年にMichelの同僚らによって、アフリカンイールキャット(Channallabes apus)が陸上でもうまく捕食できることが明らかにされた2ものの、陸に上がった最初の動物の捕食行動については、脊椎や四肢の骨格構造といった「移動」に着目した研究と比べて、あまり研究が進んでいないからだ。

水中で捕食する魚類の多くは、獲物を周囲の水ごと吸引して飲み込む「吸引捕食」と呼ばれる方法で狩りをする。しかし、陸上ではこの方法は使えず、獲物を口の中に引きずり込むには柔軟で動きのある舌が必要になる。だが、魚の舌は運動性に乏しく、狩りに役立つとは言い難い。

この問題を回避するためにトビハゼがとったのが、口の中に水を蓄えて陸に上がり、それを「流体力学的な舌(hydrodynamic tongue)」として使う、独特な捕食方法である。Michelらは今回、アクリル樹脂製の水槽の底に餌(エビの小片)を置いて、トビハゼが捕食する様子をハイスピードX線カメラで撮影した。得られた映像には、トビハゼが、まず大きく口を開け、餌に向けて水を徐々に吐き出しながら近づき、次にその水が餌を包み込むように広がった直後に顎で餌を囲い込み、最後に吐き出した水の一部を餌と共に吸い込んで口を閉じる様子がはっきりと映し出されていた。

「水を獲物に吐きかけて、直後にその水を獲物と一緒にものすごい速さで吸い上げます。口の中にある水を舌の代わりに使っているのです」とMichelは説明する。

この一連の動きは、上下の顎の骨や舌骨など複数の骨を動かすことで作り出されており、Michelによると、それは水中の魚類が行う吸引捕食ではなく、両生類であるイモリが舌を使って獲物を捕らえる際の動きに似ているという。ということは、水を使った同様の捕食方法が、陸上における捕食行動の進化の初期段階とも考えられる。

トビハゼの「水の舌」を使った捕食法では、捕らえた獲物を口の奥に移動させて飲み込むことも可能だ。これは、アフリカンイールキャットのように餌を飲み込むために水中に戻らなければならない種に比べて、陸上での生活にかなり有利であるといえる。

ところがそんなトビハゼも、水中では逆にうまく獲物を捕らえることができないという。「トビハゼは陸上での捕食がとてもうまく、餌を置くとほんの一瞬のうちになくなってしまいます」とMichelは舌を巻く。「一方で、水中での捕食はかなりぶざまです。完全に失敗することもあるんですよ」。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Michel, K. B., Heiss, E., Aerts, P. & Van Wassenbergh, P. Proc. R. Soc. B 20150057 (2015).
  2. Van Wassenbergh, S. et al. Nature 440, 881 (2006).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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