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エウロパにプレートテクトニクス運動

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2014.141212

原文:Nature (2014-09-11) | doi: 10.1038/513153a | Plate tectonics found on Europa

Alexandra Witze

近年、重大な発見が続いている木星の衛星「エウロパ」で、プレートテクトニクス運動が起きていることがこのほど明らかになった。エウロパ探査への機運がいちだんと高まっている。

木星の衛星エウロパの表面に走る無数の傷痕のいくつかは、プレートの沈み込みによってできたものかもしれない。

GALILEO PROJECT/JPL/NASA; REPROCESSED BY TED STRYK

NASA(米国航空宇宙局)が木星の衛星エウロパの調査方法に関するアイデアを募集していたことはご存じだろうか。

エウロパの氷殻の下には水でできた海があり、理論的には生命が生存可能と考えられている。NASAは、現時点ではエウロパへの正式なミッションを計画していない。だが、米国連邦議会がエウロパ探査に強い関心を寄せていることと、近年エウロパに関する発見が相次いでいることに刺激を受けたNASAは、ミッションを実施するなら探査機にどのような観測装置を搭載するべきか、科学者の意見を求めることにしたのだ。探査ミッションの形としては、必要最低限の装備だけを付けてエウロパをかすめる探査機から、入念に設計され何年にもわたってエウロパを観測する木星周回機まで、さまざまな可能性が考えられている。

2014年9月7日には、エウロパ熱をさらにあおりそうな大ニュースが飛び込んできた。地球の表面は硬い岩盤でできた十数枚の巨大なプレートで覆われていて、その運動が各種の地殻変動を引き起こしているが、エウロパの表面でも、氷でできた巨大なプレートが同じような運動をしているかもしれないというのだ。この発見は、Nature Geoscience 2014年10月号に報告された1。活発な地質活動が存在するならば、エウロパの氷の表面はその下にある海とつながっていることになり、塩分や鉱物の他、もしかすると微生物が海から氷の表面に出てきて、再び海へと戻っていく経路になっている可能性も示唆される。

この報告をしたのは、以前アイダホ大学(米国モスコー)に在籍していた地質学者のSimon Kattenhornとジョンズホプキンス大学応用物理学研究所(米国メリーランド州ローレル)の惑星科学者Louise Prockterである。2人は、NASAのガリレオ探査機が1995年から2003年にかけて木星を周回しながら撮影したエウロパの画像を組み合わせることで今回の発見に至った。エウロパの画像のほとんどがひどくぶれていたが、少数の領域では高解像度の画像が得られていて、彼らはそのうちの1つを精査した。

KattenhornとProckterは画像で確認できる隆起や帯などの特徴的な地形を巨大な地質学パズルのピースに見立てて、これらが地殻運動により引き裂かれ、引き離されてゆく様子を追跡し、時間の経過とともにエウロパの表面がどのように変化していったかを調べた。「全てのピースをはめ込むと、出来上がった画像には大きな穴があいていました。空白の部分があったのです」とKattenhornは言う。そして彼らは、欠けている部分は何らかの方法でエウロパの内部に吸い込まれたに違いないと結論付けた。

KattenhornとProckterは、エウロパのプレートテクトニクスについて、厚さ数kmの氷殻が、より温度が高く、より流動性のある氷の上を滑り回るというシステムを提案している。1枚の氷のプレートが別のプレートに衝突して下に潜り込み始める「沈み込み」が起こると、潜り込んだプレートは融解してその下の氷に取り込まれるというのが彼らの主張だ。

エウロパ上で新しい氷殻が生まれてくる場所はすでに特定されていたが、氷殻が消滅する場所が特定されたのはこれが初めてである。

けれども、もっと広い領域の高解像度画像がなければ、他の場所でも沈み込みが起こっているかどうかを知ることはできない。各所でこうした沈み込みが起こっているなら、表面と深部の間で生命に必要な化合物が循環している可能性が出てきて、エウロパの海に生命が存在できる見込みは大幅に高まる、と米国地質調査所(アリゾナ州フラッグスタッフ)の惑星科学者Michael Blandは言う。

この発見の前の2013年12月にも、エウロパの南極から水蒸気が噴出しているという報告があり、大きな話題になった2。その後、水蒸気の噴出は観測されておらず、この現象が今回発見されたエウロパのプレートテクトニクス運動と関連があるかどうかは不明である。NASAは今、こうした発見についてより深く調べるために、どのようなミッションが最適であるかを考える必要に迫られている。

NASA/JPL-CALTECH

ジェット推進研究所(米国カリフォルニア州パサデナ)の技術者たちは、数年前からエウロパ・クリッパーというミッションのコンセプトを練り上げてきた。彼らはミッションの合理化を繰り返し、ついに、一連の観測装置を携えてエウロパを目指す20億ドル規模(約2200億円)の探査機をデザインした(「エウロパを調べあげる」参照)。

けれども、費用削減を迫られるNASAが求めるのは、10億ドル(約1100億円)で実施できるミッションだった。NASAは現在、いくつかの提案を検討しているとみられる。

戦略的なシフトダウンは一部の科学者を失望させている。エウロパ・クリッパーのアイデアを出したジョージア工科大学(米国アトランタ)の惑星科学者Britney Schmidtは、研究者がコストについて考えたことがないかのように注文をつけられるのは心外としつつも、「10億ドルという縛りの下でミッションのコンセプトを考えるのは、何か違う気がします。社会からの付託に応えてエウロパで最高の科学探査を実施しようと思ったら、エウロパ・クリッパーを送り込まなければなりません」と言う。数多くの観測装置を搭載したエウロパ・クリッパーなら、沈み込み帯を調査したり、噴出する水蒸気を探ったりする他、さまざまな科学的疑問に答えることができるだろうとProckterは説明する。

2014年7月、NASAは惑星科学者たちに、エウロパ・クリッパーのような探査機に搭載したいと思う観測装置のアイデアを費用を気にせず提案してほしい、と依頼した。10月17日に提案の受け付けは締め切られ、NASAは2015年4月までにその中から約20の案を選んで、より厳密に検討していく予定である。この2年間、米国連邦議会はNASAの惑星科学部門に対して要求よりも数千万ドルずつ多い予算を与え、その資金を使ってエウロパ探査のミッションコンセプトを立案するように指示してきた。この動きを主導しているのは、『スター・トレック』を好んで引用する宇宙ファンで、強力な歳出委員会のメンバーである下院議員John Culberson(共和党、テキサス州選出)である。

エウロパの研究者は、この優遇措置を喜んでいる。「興奮のあまり口から泡を飛ばしてしまうほどです。エウロパについて、まだまだたくさん学ぶことがあるのです」とKattenhornは言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. S. A. Kattenhorn & L. M. Prockter, Nature Geoscience 7, 762–767 (2014).
  2. L. Roth, et al. Science 343, 171-174 (2014).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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