Research press release

【化石】アウストラロピテクス・アナメンシスの頭蓋骨と向き合う

Nature

エチオピアで発見された380万年前のヒト族のほぼ完全な頭蓋骨化石について記述した2編の論文が、今週掲載される。著者は、この頭蓋骨がアウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)種のものだとしており、最も原始的なアウストラロピテクス属とその起源に関する新たな手掛かりがもたらされた。

ヒト族のアウストラロピテクス属の最も原始的な種については、解明があまり進んでいない。これは、350万年前より古い頭蓋化石がほとんど見つかっていないためで、アウストラロピテクス属の最も原始的な系統として知られるアウストラロピテクス・アナメンシスの化石標本は420~390万年前のものとされ、主に顎と歯の化石だ。これに対して、後期の種については、350~200万年前のものとされる複数の頭蓋骨が知られている。

今回、Yohannes Hail-Selassieたちの研究グループは、エチオピアのウォランソ - ミルで発見されたほぼ完全な頭蓋骨について、その歯と顎を基にアウストラロピテクス・アナメンシスの頭蓋骨としたことを報告している。この化石標本はサイズが小さいが、雄の成体のものである可能性が高い。一方、この頭蓋骨の形態が原始的であることから、この化石は、さらに古いヒト族(例えば、サヘラントロプス属やアルディピテクス属)との関連性を示しており、(有名な「ルーシー」の化石によって代表される)後代のアウストラロピテクス・アファレンシスとの直接的な関連性に関するこれまでの仮説に疑問を投げ掛けている。特に、この新知見は、向上進化(単一の進化系統においてアウストラロピテクス・アナメンシスの後にアウストラロピテクス・アファレンシスが出現した)ではなく、分岐進化(この2つの系統が少なくとも10万年間重複していた)が起こった可能性を示唆している。

Hail-Selassieたちは、別の論文で、この頭蓋骨の年代と周辺環境について記述しており、アウストラロピテクス・アナメンシスが、あまり雨の降らない潅木地に居住し、その場所によって草地と湿地、河畔林の割合が異なっていたという見解を示している。

同時掲載されるNews & Viewsでは、Fred Sporeが「この頭蓋骨が人類進化のもう1つの有名な象徴になりそうだ」と記し、この頭蓋骨の発見は「初期ヒト族の進化系統樹に関する[中略]我々の考え方に大きな影響を与えるだろう」と結論付けている。

A nearly complete 3.8-million-year-old hominin skull discovered in Ethiopia is described in two papers published in Nature this week. The skull, which the authors assign to the species Australopithecus anamensis, provides new insights into the earliest australopiths and their origins.

The earliest members of the hominin genus Australopithecus have remained poorly understood, owing to the near absence of cranial remains older than 3.5 million years. Specimens of A. anamensis, the oldest known members of the genus, date to 3.9 - 4.2 million years ago and consist primarily of jaws and teeth, although multiple skulls are known for younger species, dating to 2.0 - 3.5 million years ago.

Yohannes Haile-Selassie and colleagues report a nearly complete cranium from Woranso-Mille, Ethiopia, which they assign to A. anamensis on the basis of its teeth and jaw. The specimen is likely to be an adult male despite its small size. However, the primitive cranial morphology links this fossil to even more ancient hominins, such as Sahelanthropus and Ardipithecus, and casts doubt on previous assumptions about a direct link to the younger Australopithecus afarensis (represented by the famous ‘Lucy’ fossil). In particular, the findings suggest that A. anamensis and A. afarensis lineages may have overlapped for at least 100,000 years (‘cladogenesis’) rather than the former preceding the latter in a single evolving lineage (‘anagenesis’).

A second paper describes the age and context of the cranium, and suggests that the hominin lived in predominantly dry shrubland, with varying proportions of grassland, wetland and riverside forest.

“This cranium looks set to become another celebrated icon of human evolution,” writes Fred Spoor in an accompanying News & Views article. He concludes that the discovery will “substantially affect our thinking […] on the evolutionary family tree of early hominins”.

doi: 10.1038/s41586-019-1513-8

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