Nature ハイライト

遺伝:寄生植物のお返し

Nature 432, 7014

条件によって、ある植物の遺伝子が別種の植物へ飛び移ることがあるが、この機構はまだわかっていない。J Palmerたちは、寄生植物が、宿主植物に物理的にぴったりと密着するだけでミトコンドリア遺伝子を渡せることを報告している。 ミトコンドリアは、細胞内で独立したエネルギー発生装置として働く小器官で、独自の遺伝子一式を持っている。Palmerたちは、オオバコの仲間(Plantago)と、この草にからみつく2種の寄生植物について、ミトコンドリア遺伝子atp1に注目した。宿主である植物には、思いがけなく2種の異なる寄生性遺伝子が見つかった。その1つはヨーロッパとアフリカ北部で見られるネナシカズラの仲間(Cuscuta)に由来し、もう1つは北部アンデス山脈で見られるハマウツボの仲間(Bartsia)に由来するものだった。 今回得られた遺伝的および生物地理学的な証拠は、植物遺伝子の寄生者から宿主へ向かう移入が起こり得ることを示している。この逆、すなわち宿主から寄生者への遺伝子移入が起こることは既にわかっている。Palmerたちは、宿主と寄生植物の密接なからみ合いは、もっと大規模な遺伝子交換を引き起こしているかもしれないと考えている。寄生植物が自らの細胞を宿主に押し込むため、宿主と寄生植物の細胞の成分が混ぜ合わされるチャンスはきわめて多いのである。

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