Nature ハイライト

生態:種の灯火を守る最後の抵抗

Nature 431, 7009

絶滅は、まるで死に神の鎌が何種類かの生物の運命をまとめて断ち切ってしまうような、1つの原因で起こるひとまとまりの現象だととらえられることが多い。しかし、絶滅の1つ1つを見れば、そこには独自の物語があり、こうした単純な考え方が誤っていることを教えてくれる。今週号ではA J Stuartたちが、数千年前に絶滅に至った2つの代表的な化石種の最後の生息状況について、これまでになく詳しい記録を報告している。この2種とはケナガマンモス(Mammuthus primigenius)とオオツノジカ(Megaloceros giganteus、アイルランドヘラジカともいう)で、マンモスが有史時代まで北極圏の島々で生き延びていたことはすでにわかっている。しかし今回の報告によると、これに加えてオオツノジカも西シベリアで、従来考えられていたより3,000年も後の約7,700年前まで生き延びていたのだという。オオツノジカもケナガマンモスも絶滅するまでに、主に気候や植生の変動によって、それぞれ異なる大きな分布変化をたどった。両者の環境への応答のしかたが違うのは、生態が違ったからである。絶滅とはつきつめれば多数の個体の死の累積であり、それぞれの個体は各自のやり方で変動する環境条件にそれなりに応答していったのだ。

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