Nature ハイライト

進化:グッピーの泳ぎから考え直される老化の理論

Nature 431, 7012

老化を引き起こす進化上の推進力に関する従来の理論はもっと改良が必要となりそうなことが、魚を使った研究で明らかになった。早期死亡のリスクが高い種は、より速い老化の徴候を示すと従来考えられてきたが、この現象はどうやらそれほど単純ではないようだ。 捕食の脅威にさらされている個体群のグッピー(Poecilia reticulata)は、泳ぐ速さに関してのみ速やかな老化の徴候を示すが、繁殖力や個体寿命に関してはそういうことはないとD N Reznickたちは述べている。従来の理論によれば、短い平均余命は老化を速める変異が自然選択によって除かれる機会が少ないことを意味するから、捕食のリスクの高い種は、どのような基準に照らし合わせても老化が速やかに起こると考えられる。 Reznickたちは、トリニダードの川で捕獲した野生種のグッピーを繁殖させたものを使い、今回の知見を得た。個体群の一部は捕食者による脅威に毎日直面するが、別の個体群は滝に守られて捕食のリスクが低い生活を送っている。しかし、こうした環境にあっても、時間によって衰えることが少ないのは泳ぐ能力だけだとわかった。つまり、神経と筋肉の機能は加齢から守られるかもしれないが、他の生理的性質はそうではないというのだ。この結果は、生存能力、繁殖力、泳ぐ能力のどれに注目するかによって、老化の速度が異なることを示しているが、同様のパターンは他の種でもみられるだろうとP A AbramsはNews and Viewsで述べている。

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