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地球物理学:グリーンランドの氷河上湖で排水が起こるわけ

Nature 522, 7554

グリーンランド氷床西縁部の氷河上湖。
グリーンランド氷床西縁部の氷河上湖。 | 拡大する

Laura A. Stevens

グリーンランド氷床の表面には、温暖な季節に、特に標高が中程度から低い所で湖がよく現れる。こうした湖は急速に排水することがあり、そうした排水の前には水圧破砕事象が起きることが多いが、水圧破砕を引き起こす機構、ひいては湖と広大なグリーンランド水文系との間を関連付ける機構はよく分かっていない。L Stevensたちは今回、密なGPS観測網を用いて、研究対象としたグリーンランド氷床西部の湖では、隣接する氷河甌穴(氷床の表面と底部を連結する鉛直の流路)から底部に流れ込んだ水によって生じたと思われる隆起事象が、急速な排水事象に先立って起きていることを示した。この隆起は、氷床が水圧破砕を起こすのに十分な応力を生じさせるので、湖の急速な排水をもたらす。推論ではあるが、著者たちは、標高が高い所ではクレバスが比較的少ないので、隆起による破砕機構の地理的な広がりは限定されているだろうと考えている。

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