Nature ハイライト

化学:水の記憶は迅速に失われる

Nature 434, 7030

液体の水の常に揺らいでいる3次元構造は、分子がお互いに対してどのように配列しているかという記憶をこれまで考えられていたよりも速く失うらしい。 液体の水に見られる多くの変わった性質は、水素結合と呼ばれる弱い相互作用によって水分子が互いに結合し、相互に緩く結合したネットワークが形成されることによると考えられている。相互作用が十分強く長続きするのであれば、水はある構造配列をしばらくの間「覚えている」かもしれない。だが、それが誤りであることは長年にわたって証明されてきた。にもかかわらず、これはホメオパシー療法の効果を説明するための極めて重要な論拠となっている。つまり、溶液が非常に薄められて活性分子が存在しなくなった場合でも、溶液中の水は希釈前に存在していた活性分子から受けた構造に対する摂動を「覚えている」というのだ。 R J D Millerたちは、水で満たされた極めて薄いセルを使ってOH結合の振動をモニタリングし、レーザー光によって誘発された摂動が液体の水の構造をどのように変化させるか、そしてこれらの変化がどれくらい長く持続するか調べた。その結果、個々の構造の「記憶」は50フェムト秒より長く持続しないことが明らかとなった。この値は以前の観察結果よりも一桁短い。

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