Nature ハイライト

生態:生物多様性減少を測る新しい指数

Nature 434, 7029

持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)では、2010年までに生物多様性減少のペースを十分に減速させることを目標に掲げた。だが、その目標を達成しつつあるかどうかを判断する方法として、合意の得られたものは現在のところまだない。今週号ではB ScholesとO Biggsが、生物多様性に人間活動が及ぼす影響を測るための方法を提案している。この方法は彼らによると、簡単で感度がよく、厳密だという。 この新手法は、絶滅ではなく、広範な分類群にまたがる生物種の個体群レベルでの変化に注目したものだ。ScholesとBiggsが提案したこの「生物多様性完全度指数」(biodiversity intactness index;BIIと略)では、広い保護区域で比較的撹乱を受けていない個体群の平均数度(平均個体数)が、調べたい特定地域の現代以前の状況を表していると想定し、その数度と問題とする特定地域内の種の平均数度とを比較する。 著者たちはBIIをアフリカ南部の400万km2の区域にあてはめ、この区域の植物種と脊椎動物種の個体群は平均して、現代以前に比べて16%減少したという結論を得た。特に哺乳類は状況が悪化しているようで、以前のおよそ70%まで減っており、草原の多様性にも同じくらいの気がかりな減少が見られる。 ScholesとBiggsが出した興味深い結論の1つは、多様性の大部分は正規の保護区の外で見られ、生物多様性の減少速度を低減させるという目標を達成するには、こうした生産力のある保護区周辺地域の生物多様性を先取りして保護管理することが重要だというものだ。 News and ViewsではG Maceが、今回提案された指標が他の方法に比べて優れている点をいくつか取り上げている。例をあげれば、空間や時間をまたぐ動向を容易にモニターできることや、各種の生態系の比較研究に有用なことなどである。

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