Nature ハイライト

Cover Story:テナガザルゲノム解読:テナガザルのゲノムには、染色体の迅速な進化と複数種へのほぼ同時に起こった放散が映し出されている

Nature 513, 7517

キタホオジロテナガザルの毛色は、雄が黒色、雌がクリーム色と大きく異なる。仔の毛色は誕生時はクリーム色だが、生後約6か月で一旦黒色になり、雌の場合さらに性成熟に達する6歳ごろからクリーム色に変化し始める。
キタホオジロテナガザルの毛色は、雄が黒色、雌がクリーム色と大きく異なる。仔の毛色は誕生時はクリーム色だが、生後約6か月で一旦黒色になり、雌の場合さらに性成熟に達する6歳ごろからクリーム色に変化し始める。 | 拡大する

Credit: Heather Angel/Natural Visions

表紙は、「ペッパー」という名前が付けられた生後5か月の雌のキタホオジロテナガザル(Nomascus leucogenys)である。テナガザル類の多くの種は東南アジア原産の小型の樹上生活類人猿であり、そのほとんどがIUCNリストで絶滅危惧種に指定されている。L Carboneたちはキタホオジロテナガザルのゲノムを報告し、旧世界ザルと大型類人猿との分岐点にまたがっている動物群の生物学的性質と進化史に関して、興味深い考察を行っている。著者たちは、テナガザルに特有の新規レトロトランスポゾンがテナガザルゲノムに可塑性を付与した仕組みと考えられるものを調べた。核型の迅速な進化は、気候および環境に複数回生じた変化と組み合わせて、テナガザルでほぼ同時に起こった4属への分岐を説明できるかもしれない。前肢の発生および結合組織に関わる遺伝子に対する正の選択は、熱帯雨林の林冠でのテナガザル特有の移動方式に関係した可能性がある。

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