トランジスタなど電気部品の半導体材料は、ドーパントと呼ばれる微量の不純物がないときちんと動かない。通常このようなドーパントは、半導体全体にランダムに散らばっている。今週号では、ドーパントを規則的に配列すると、特にデバイスが非常に小さいときにその性能を改善できることが明らかにされている。 品田賢宏たちは、帯電したリン原子のビームを使って小型のトランジスタにドーパントを添加した。彼らは帯電したドーパント原子をシリコンチップ中へ1個ずつ打ち込んで、原子がねらった場所に正確に当たるように調節を加え、リンイオンが約100ナノメートルの間隔で並ぶ格子状のパターンを作ってシリコンチップ中に整列するようにした。 従来型の半導体はランダムにドープされているが、電子デバイスがどんどん小さくなってくると、このランダム性が問題になる。ドーパント間の平均間隔がデバイス寸法と同程度になると、ドーパント原子の数と分布はデバイスごとにかなり変動する可能性があり、デバイスの電子特性に悪影響を与えかねない。ドーピングを原子スケールで正確に制御すれば、極めて小さい電子回路の性能と再現性を改善でき、これはシリコンベースの固体量子コンピューターを作るような場合にも役立つだろう。
2005年10月20日号の Nature ハイライト
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