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遺伝:遺伝子が照らし出す蚊への細菌感染の影響

Nature 436, 7048

細菌感染がどのようにして蚊を実際上不妊とするのか、その遺伝的機構に関する重要な部分が今回解明された。この発見は、マラリアやフィラリア症などの蚊が媒介する病気の拡がりを防ぐのに役立つかもしれない。  Wolbachiaという細菌に感染した蚊は、感染していない蚊との間での生殖がうまくいかなくなることが多く、その結果Wolbachiaは蚊の個体群中に速やかに拡がっていく。こうした影響は複雑なパターンで生じることが多く、特にWolbachiaの異なる株がかかわった場合、さらに複雑になる。  複数のWolbachia株のゲノム解析から、ゲノムのちがいの多くがアンキリンタンパク質ドメインをコードする遺伝子から派生していることがS Sinkinsたちによって報告された。タンパク質のこうしたちがいが細胞分裂を妨げて生殖を行えなくすることがあるらしい。このような遺伝子の多くはWolbachiaに感染するウイルスに由来するため、こういう分子の進化は一層複雑なものとなっている。  蚊の方でもこうした生殖阻害にうち勝つような機構を進化させてきた可能性があるとSinkinsたちは述べている。また、A Hoffmannは「宿主ゲノムの進化は、Wolbachiaを害虫群の数を抑えるのに使うという前途遼遠な目標の障害となるかもしれない」とNews and Viewsで指摘している。

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