Nature ハイライト

細胞:VEGFR3と血管新生の制御

Nature 484, 7392

DLL4-Notchシグナル伝達はVEGF経路とのクロストークを介して内皮細胞の出芽および新生血管の増殖を抑制する。このクロストークが影響を及ぼす仕組みについての現在広く受け入れられているモデルでは、VEGFR2が非常に重要な役割を果たすとされている。つまり、VEGF-AのVEGFR2に対する作用によって血管先端細胞でのDLL4発現が引き起こされ、次に、血管茎細胞でのNotchシグナル伝達がVEGFR2とVEGFR3の転写を抑制し、それによって血管茎細胞が血管先端細胞として振る舞うのが防止されると考えられている。今回、Beneditoたちは、このモデルに修正が必要なことを明らかにしている。血管先端細胞でのDLL4タンパク質の発現はVEGFR2シグナル伝達によって弱く調節されるだけで、Notch阻害はVEGFR2が存在しない場合でも内皮細胞の出芽を誘導できることがわかった。さらに、Notch阻害は、VEGFR2の転写にはほとんど影響を与えないが、VEGFCの主要な受容体であるVEGFR3の方は強く調節すること、またVEGFR3のキナーゼ活性の阻害は、Notchシグナル伝達の活性が低い内皮細胞の出芽を抑制するが、VEGFR3リガンドに結合する抗体は出芽を抑制しないことがわかった。これらの知見は、VEGF-A阻害剤を投与されたがんや加齢性黄斑変性症の患者の一部がこの治療法に反応しない理由の説明に役立つかもしれない。またこの研究は、血管のNotchあるいはVEGFR3の活性化状態を調べれば、より有効性の高い治療法の手がかりが得られる可能性を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度