Nature ハイライト

医学:がん治療法としての殺腫瘍ウイルス

Nature 477, 7362

殺腫瘍ウイルス(oncolytic virus)とは、腫瘍細胞に選択的に感染してこれを殺すウイルスのことで、天然のものと遺伝子操作で作られたものがある。D Kirnたちは今回、遺伝子操作で作製された殺腫瘍ウイルスJX-594を単回の注射によって全身的に投与して、腫瘍組織に選択的に送達されることを実証した第一相臨床試験の結果を報告している。腫瘍の生検から、この殺腫瘍ウイルスはがんでは増殖していたが、隣接する正常組織では増殖していないことが示された。JX-594は、上皮細胞増殖因子受容体/Ras経路が活性化されている幅広い種類のがん細胞で増殖するように遺伝子操作されている。この臨床試験は臨床的有効性を証明するために設計されたものではないが、得られた結果はJX-594が一部のがん患者で臨床反応を引き出せる可能性を示唆している。

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