形態の進化ではたいてい発生遺伝子の変化が起こっているが、原因となった変異がいくつあって、どんな影響を与えたのかについてはほとんどわかっていない。Frankelたちはセイシェルショウジョウバエ(Drosophila sechellia)のshavenbaby遺伝子をモデル系として用いて、この現象の遺伝学的特性を調べた。そして、shavenbabyの5つのシス調節エンハンサーの1つに見られる進化的変化が、この遺伝子の発現の時期と量の両方を変化させた多数の単塩基置換によって生じたことが明らかになった。したがって、ショウジョウバエでこうした無毛の幼虫が進化するには、大きな影響を及ぼす単一の変異ではなく、小さな影響を及ぼす多数の突然変異が必要だったことになる。この研究は、ダーウィンが提唱した「漸進的」進化説に対する単塩基置換レベルでの定量的裏付けとなる。
2011年6月30日号の Nature ハイライト
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