Nature ハイライト

生態:熱帯雨林の昆虫間をとりもつ共通の天敵

Nature 428, 6980

植物の葉を食べる1種類の昆虫の個体群が、近縁な草食性昆虫の個体群に間接的に影響を与えることがある。たとえ、この2種の昆虫が食物やすみかなどの資源をめぐって直接的に競争していなくても、共通の天敵を介して影響を及ぼしてしまうのである。ベリーズでの研究報告によると、2種の昆虫のうち1種の個体数が減ると寄生バチによる全体の寄生率が下がり、これがひいてはもう1種の個体数を増加させてしまうのだという。 H C J Godfrayたちは、こうした「見かけの競争」が熱帯雨林という環境で実際に起こっていることを初めて示した。ハモグリバエの仲間(Calycomyza属)は幼虫が葉の中に潜って葉肉組織を食べるが、Godfrayたちはこの幼虫が好んで食べる木から葉を取り除いて、幼虫の数を人為的に減らした。このハエの幼虫には寄生バチが卵を産みつける。1年後、別の近縁なハエへのハチの寄生率は0.6倍に下がり、これらのハエは数を増やしていた。 これと同じような個体数の増加は、寄生バチに寄生される甲虫の一群で1種を除去したあとでも見られたと、Godfrayたちは報告している。選択的伐採などの慣例的伐採法は、生えている樹木すべてを伐採するよりも地球に優しいとする見方が一般的だが、今回の研究成果からみて、選択的伐採は多雨林の食物網に予見不能の影響を及ぼしかねないと著者たちはつけ加えている。

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