Nature ハイライト

神経:外傷を引き起こす強大音の伝達経路

Nature 461, 7267

部分的な聴覚損失が、強大な音、あるいは中等度の音に対してさえも感受性が上昇する聴覚過敏を伴うことがあるのは、ちょっと矛盾した話のように思える。その基盤となる機構は、正常聴覚者で強大音によって引き起こされる「聴覚痛」と同じく、不明である。今回、ラット内耳から単離した蝸牛での、ギガオームシール・パッチクランプ法による神経繊維内記録と色素標識を使った実験によって、長年その機能が謎であった蝸牛のII型求心性神経が、強大音の伝達経路であるらしいことが明らかになった。これらの神経は、蝸牛外有毛細胞からのシナプス入力を受け、組織が傷害されると放出されることが知られているATPによって、体性神経のC繊維と同じく活性化される。外傷性の強大な音にさらされると、有毛細胞の活性と放出されたATPが組み合わさって、これらの解剖学的に独特な蝸牛II型求心性神経にとって適度の「刺激」がもたらされるのかもしれない。

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