Nature ハイライト

Cover Story:収穫を台無しにする疫病菌のゲノム:ゲノム解読によって明らかになったジャガイモ疫病菌の適応性の基盤

Nature 461, 7262

19世紀にアイルランドでジャガイモ飢饉を引き起こした、ジャガイモ疫病菌Phytophthora infestansのゲノム配列が解読された。主に葉を枯らすが、表紙にみられるようにイモのほうにも被害を及ぼすこの菌は、現在もなお莫大な被害をもたらしており、ジャガイモ疫病による作物損害は年間数千億円に上る。この病気の蔓延防止が難しいのは、菌が遺伝的に抵抗性をもつジャガイモ系統に極めて迅速に適応することが一因である。Phytophthora属の別の菌2種とのゲノム比較により、分泌性病害エフェクタータンパク質の特定ファミリーの急速な入れかわりと大規模な拡張が明らかにされた。このファミリーには、宿主の生理学的性質を変化させると考えられる活性をもつ遺伝子で、感染時に発現が誘導されるものが多数含まれている。急速に進化するこのエフェクタータンパク質遺伝子群は、ゲノムの高度に動的な拡張された領域に認められ、これは宿主植物への迅速な適応性に寄与する要因の1つであると考えられる。P. infestansのゲノムは、現時点で解読されているクロムアルベオラータ類のゲノム中で最大の約2億4,000万塩基であり、75%近くという極めて高い反復含量をもつ。この菌は、褐藻類や珪藻類などの生物と近縁の菌類様真核生物の独立した系統である卵菌類のモデル生物となっている(Letter p.393)。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度