Nature ハイライト

物理:反強磁性を自在に制御する

Nature 447, 7140

強磁性体はどこにでもあるが、強磁性という性質自体はまれなものだ。その近縁に当たりもっと不思議なのが反強磁性体で、これはさらに多くみられるが、この性質が知られたのは100年足らず前で、技術関連で問題とされ始めたのは20年くらい前のことに過ぎない。その理由の1つは、強磁性磁区の類似物、つまり強磁性体を分割してできる小さな棒磁石に相当するものが得られないことである。今回、X線光子相関分光法という新しい技術を使って、クロムの反強磁性体におけるスピン密度と電荷密度の超構造をナノメートルスケールで調べることが可能となった。この結果から、反強磁性体の幅広い応用への道を開く磁性エンジニアリング技術が生まれるかもしれない。今回使われた新技術により、実際には反強磁性磁壁が静止することはなく、数マイクロメートルの範囲にわたって常に前進したり後退したりしていることが示された。そして磁壁の動きは、100 K以上の温度で熱的に活性化するものの、より低温では活性化されず、40 K以下に冷却すると、量子揺らぎと一致する一定値に飽和する。

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