Nature ハイライト

脳:道徳的判断と感情

Nature 446, 7138

道徳的判断は主として理性による問題処理過程なのだろうか、それとも情緒、すなわち感情が何らかの役割を果たしているのだろうか。情緒の正常な発生にかかわる脳領域(腹内側前頭前皮質)に損傷のある6名の患者の研究から、道徳的判断を下す理由として情緒が特異的な役割を果たしていることが示された。これらの患者は、ある種類の道徳的ジレンマ、つまり大勢の他人を救うために自分の子どもを犠牲にするかどうかを決めなければならないといった、いわば「断腸の思い」に駆られるような状況下での判断に、異常に「功利主義的」なパターンを示した。こうしたもの以外の道徳的ジレンマについては、患者たちの下した判断は正常だった。この研究は、道徳的判断に情緒が果たしている正常な役割を明らかにしただけでなく、サイコパス(人格障害)のような人々でみられる病的な道徳行動の裏にある機構にも関係がある。

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