Nature ハイライト

腫瘍:がんと細胞老化

Nature 444, 7119

がんは一般に、制御されていない細胞増殖と考えられている。しかし、多くのがんの初期段階で、がん遺伝子の発現は細胞の老化と関連している。今回、この問題の説明が得られた。がん遺伝子が誘導する老化とDNA損傷応答との間の関連が、2つの研究グループから報告されたのである。活性化されたがん遺伝子は、異常なDNA複製を引き起こすことがあり、その結果DNA損傷が生じ、これによって細胞の老化が導かれる場合がある。細胞の老化はin vivoでの腫瘍発生を阻む障壁となることが既に知られており、そうするとがん遺伝子が誘導する老化は、体に本来的に備わっている対がん防御作用なのかもしれない。しかし、さらなる変異が起これば、この防御作用の有効性は多くの場合失われる。細胞の老化と腫瘍形成との間の関係の解明は、老化マーカーを使った診断法や予後判定手段の開発に役立つ可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度