Nature ハイライト
Cover Story:類人猿ゲノム比較の成果:6種の類人猿の全ゲノム塩基配列によってヒトの進化への洞察がもたらされた
Nature 641, 8062
ヒトゲノムが解読されて以来、比較のために、ヒトに最も近縁な霊長類のゲノムを解読する取り組みが続けられてきた。しかし、そうした類人猿のゲノムは巨大で反復配列を多く含むために解読が困難で、ヒトと類人猿の進化を比較する研究が制限されてきた。今回、E Eichlerたちがこの空白を埋めるべく、類人猿の主要な6系統を代表する種、すなわちチンパンジー(Pan troglodytes)、ボノボ(Pan paniscus)、ゴリラ(Gorilla gorilla、表紙画像)、ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)、スマトラオランウータン(Pongo abelii)、フクロテナガザル(Symphalangus syndactylus)の、ほぼ100%完全なゲノム塩基配列を提示している。これらの新たな塩基配列は、最近得られたヒトの完全なゲノム塩基配列と同等の品質で、これにより、セントロメアなど従来アクセスできなかった領域の解析が可能になり、新規の系統特異的遺伝子が明らかになった。研究者たちは、これら6例のゲノムが今後のヒトと類人猿の進化研究の基盤になると述べている。
2025年5月8日号の Nature ハイライト
環境科学:革新的な冷却技術でデータセンターを持続可能に
原子核物理学:軽い元素の非対称な核分裂
ナノスケール材料:ツイスト2層グラフェンの異常な電子–フォノン結合
ペロブスカイトLED:高性能の純赤色発光ペロブスカイト
冶金学:合金中のナノ析出物による強度と水素脆化耐性の向上
冶金学:持続可能なニッケルの抽出法
気候科学:極端気候事象へのかつてない生涯曝露の見積もり
火山学:火山下のマグマ領域の上面となるリソスフェア–アセノスフェア境界
テクトニクス:太平洋のホットスポット列によって太平洋のプレート絶対運動が決まる
生態学:人類の生物多様性への影響の全球評価
遺伝学:脊髄髄膜瘤の原因変異の特定
神経科学:ストレスは脳のオートファジーを変調させる
神経科学:異なる気候に生息するハエで温度嗜好行動の進化を探る
微生物学:腸内ビフィズス菌が乳児を守る
免疫学:胚中心でクローンの急速な増殖中に高頻度変異が抑制される仕組み
がん:難治性肝細胞がんに対する腫瘍溶解性ウイルスの臨床試験報告
生化学:停止した複製フォークを作り直して守る環状複合体
構造生物学:脂肪酸合成酵素のクライオ電子顕微鏡構造
神経科学:AMPA受容体がCa2+を透過させる仕組みに新しい知見