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比較ゲノミクス:類人猿ゲノムの完全な塩基配列解読

Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08816-3

大型類人猿ゲノムの極めて動的な反復領域は、これまで比較研究の対象から外れていた。そのため、ヒト進化の理解はいまだ不完全なものとなっている。本論文で我々は、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、ボルネオオランウータン、スマトラオランウータン、フクロテナガザルという6種の類人猿に関して、ハプロタイプが区別された参照ゲノムおよびその比較解析の結果を提示する。我々は、染色体レベルの連続性と塩基配列の高度な正確さ(270万塩基当たりエラーが1未満)を実現し、215本の染色体の塩基配列をテロメアからテロメアまで空白なく完全に解読した。その結果、主要組織適合遺伝子複合体や免疫グロブリン座位など、これまで解読が困難だった領域も明らかになり、進化に関する詳細な知見が得られた。また、比較解析によって、これまで特徴が不明だった領域や研究が不十分だった領域の進化と多様性を、ヒトの参照ゲノムへのマッピングに起因する偏りなしに検討することが可能となった。そうした領域には、系統特異的なセグメント重複で新しく生じたばかりの遺伝子ファミリー、セントロメアDNA、末端動原体型染色体、次端部ヘテロクロマチンが含まれる。今回得られた情報資源は、ヒトおよびヒトに最も近縁な現生類人猿の今後の進化研究にとって包括的な基盤となる。

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