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古生態:大型獣絶滅の原因は人類による大量狩猟ではない

Nature 441, 7090

先史時代に起こった最大級のミステリーの1つは、今から1万年余り前の、大型獣絶滅の急増という事件である。新たな証拠によって今回、その「真犯人」がみえてきた。この大量絶滅の原因の1つは、北アメリカに新たに到来した人類がマンモスや野生のウマ(Equus ferus)などを捕り尽くしてしまったことにあると考えられてきた。だが今回、600を超える獣・人骨の年代が新たに測定され、絶滅の要因は自然の気候変動などほかにあることが示唆された。  この大量絶滅をめぐる一連の出来事は、R D Guthrieが新たに調べた放射性炭素測定年代によって今までよりも的確に説明できる。大量絶滅が起こったのは、1万3千〜1万年前の更新世から完新世への移行期である。今回の試料には、この移行期を生き延びたバイソンやワピチ(大型のシカ類)、ヘラジカ、ヒトのものと、移行期に絶滅したマンモスと野生のウマものが含まれる。  得られた証拠からすると、このときの大型獣絶滅は、気候変動あるいはもっと微妙なメカニズムが原因で起こったもので、これまで考えられていたように新世界に到来した人類の猛烈な狩猟活動によるものではなかったことになる。今回の詳細な解析により、キーストーン種(ほかの種の存在に大きな影響力をもつ種)である草食のマンモスを人類が絶滅させたために植生が変化し、それが連鎖反応的にほかの獣たちを絶滅に追い込んだという「キーストーン種の除去」説も退けられる。

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