Nature ハイライト

工学:シリコンが歪みを感じる

Nature 441, 7090

電気信号ではなく光信号を使う情報処理には多くの利点があるが、シリコンで光信号を発生・操作するのはむずかしく、シリコンチップではまだ実現されていない。R Jacobsenたちは今週号でこれらの障害の1つを克服する方法について報告している。  彼らは、導波路とよばれる微細なシリコンチャネルに沿った光ビームの伝搬を電気的に制御できる光スイッチを作製した。今回作製されたこのデバイスは、光の透過が電場によって変化する電気光学効果を利用している。  結晶性シリコンは一般に強い電気光学効果を示さない。しかし、結晶格子の対称性を破り、格子がすべての方向で同じにはみえないようにすると、この効果を引き起こすことができるという。Jacobsenたちは、シリコン導波路の上に窒化シリコンガラスの薄層を堆積することで、これを実現した。(実際には、シリカ層が窒化物とシリコンの間に挟まれている。)上側の窒化物層はシリコン原子どうしを押し離すような効果があるため、下にあるシリコンを物理的に歪ませることになる。  電気光学光スイッチを作製するのによく使われるニオブ酸リチウムは、シリコンよりも若干性能が高い材料である。しかし、Jacobsenたちは、この高価な材料ではなくシリコンを使い、標準的なチップ製造方法を利用してこのようなデバイスを作製すれば、極めて安価で容易な方法になると指摘している。

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