Nature ハイライト
がん:KMT2A再編成型またはNPM1変異型白血病におけるメニン阻害剤レブメニブ
Nature 615, 7954
重要なエピジェネティック調節因子の標的化によって、がんの異常な転写を元に戻し、正常な組織機能を回復させることができる。メニンと、エピジェネティック調節因子であるリシンメチルトランスフェラーゼ2A(KMT2A)の相互作用は、KMT2Aの再編成またはヌクレオフォスミン1遺伝子(NPM1)の変異によって生じる急性白血病で見られる依存性である。KMT2Aの再編成は急性白血病の最大10%で起きており、その予後は悪く、一方、NPM1の変異は最大30%で見られ、急性骨髄性白血病で最もありふれた遺伝的変異となっている。今回我々は、再発性または難治性の急性白血病患者を対象とした、メニン–KMT2A相互作用に対する強力で選択的な経口阻害剤であるレブメニブ(SNDX-5613)のヒト初回第1相臨床試験の結果を報告する(ClinicalTrials.gov、NCT04065399)。レブメニブによる治療は、グレード3以上の治療関連有害事象の頻度の低さと関連しており、有効性解析集団での完全寛解または部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CR/CRh)の割合は30%だった。見つかった唯一の用量制限毒性は、心電図検査での無症候性のQT間隔延長だった。以前の複数の治療ラインに対して難治性だった白血病でも寛解が見られた。さらに、高感度の臨床アッセイを用いて、残存病変のクリアランスを実証し、分化症候群を含め、正常な造血細胞への分化の特徴が特定された。これらのデータは、メニンの阻害が、感受性のある急性白血病サブタイプに対する治療戦略となることを明らかにしている。
2023年3月15日号の Nature ハイライト
天文学:SZ効果で探る宇宙の構造の熱的進化
素粒子物理学:陽子内部の質量分布を探る
量子物理学:シリコン中のキュービットで実現された汎用量子論理
工学:CMOS集積メモリスターにおける数千通りのコンダクタンス状態
材料科学:明るくて安定な近赤外ペロブスカイトLED
生物物理学:光合成複合体における初期の電子抽出
気候科学:南極の雪解け水がもたらす海洋循環の減速と温暖化
生物地球化学:全球の陸域炭素シンクの不安定化
惑星科学:地球への水の運搬を制限する微惑星の分化
生態学:海洋温暖化が浅海サンゴ礁生物に及ぼす影響
健康科学:都市生活の恩恵の伸び悩み
神経科学:タンパク質ベースの新型カルシウムインジケーター
神経科学:移ろいゆく風景と神経ネットワーク
発生生物学:雄マウスから機能的卵母細胞を作製
免疫学:FcμRによる各種IgMの認識機構
がん:メニン阻害による新たながん治療戦略
分子生物学:全ゲノム倍加がもたらす発がん性のクロマチン進化
構造生物学:4種類の呼吸鎖が協力してミトコンドリア膜をカーブさせる