Nature ハイライト

進化:カラフルな「ひげ」が助け合いの社会を生む

Nature 440, 7084

協力あるいは他人を助ける利他行動が集団内にどのように現れ、定着するのかという疑問は、進化の研究の中でもやっかいな課題の1つである。提案されている説の1つが「緑ひげ効果」であり、利他的な個体が特定のはっきりした目印(便宜的に「緑ひげ」とよぶ)をもつことで利他行動が定着すると考える。ところが新しい研究によると、この効果がちゃんと現れるのは、さまざまな変異体、つまり色違いのひげの持ち主からなる社会に「緑ひげ」が現れた場合だけだという。  これまでの理論研究では、緑ひげ効果が働くにあたって、目印の発現も、同じ目印をもつほかのどんな個体とも協力しようとする気持ちも、単一の遺伝子が担っていると想定されてきた。この場合その目印は、特定の体色から特異的な細胞表面タンパク質まで、どんなものでもかまわない。ただし、この仕組みだと集団は、ごまかしてタダ乗りする個体に被害を受けっぱなしになってしまう。つまり、実際は利他的個体でないのに利他的個体の目印をもっていて、協力行動のコストを何も支払わずに他者からの援助で利得を得るような、図々しい個体が進化してくる可能性がある。  しかしこの問題は、目印をもつ個体にさまざまな多型(言い換えると「色違いのひげ」)がある場合や、目印と協力行動とを担う遺伝子が別々にあってゆるく連携している場合にはあまり深刻にならないと、V JansenとM van Baalenが今週号で説明している。彼らが行った集団進化のコンピューターシミュレーションによると、この仕組みであれば、「同色のひげ」を共有する個体が協力し合うことができ、図々しい不心得者が集団内にはびこる恐れもないという。

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