Nature ハイライト

宇宙:あの光の起源を探る

Nature 440, 7087

広大な宇宙を見渡せば、天文学者たちは闇の中にも多くの光を観測することができる。  このような光のうち、近傍の星からの寄与分がどの程度で、初期宇宙に由来する光がどのくらいなのかは、これまではっきりわかっていなかった。L Costamanteたちは、主な近赤外線源を同定するという困難な問題を、背景光を間接的に測定することによって切り抜けるという方法を見いだした。  光のすべてを足し合わせた総計は、銀河系外背景光(EBL)とよばれている。EBLの一部は、よその銀河にあって観測にかかる星、つまり我々の「近傍」宇宙から来るものだが、宇宙が始まって最初に形成された星のような非常に古い天体からやって来るものもある。  この問題は、EBLの最も明るい赤外領域に太陽系のちりが放射する光が重なり、EBLのシグナルが多量の「光汚染」を被ることで、さらにむずかしいものになっている。  Costamanteたちは、2つのブレーザーから来るγ線を検出した。ブレーザーは、激しく活動し強力な高エネルギー放射線を発生させている銀河である。このようなγ線は、地球に到達するまでに長い時間がかかるので、その間にγ線が赤外光フォトンを跳ねとばすといったコンプトン散乱のような過程によって、わずかに暗くなる。Costamanteたちは、ブレーザーのとりうる最大輝度を検討して、この減光の下限を見積もることができた。これにより、我々とブレーザーの間の赤外EBLを計算することが可能になる。  その結果、赤外EBLによる寄与分は、「近傍」銀河の放射する近赤外光全体の推定値の下限に近いことがわかった。言い換えるとEBLは、ほとんどが近傍銀河に由来し、宇宙最初期の星から来るものはあまりないことになる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度