Nature ハイライト

進化:協力行動はどうやって社会に出現・定着したか

Nature 440, 7087

ヒトの社会は協力行動が広くみられる点で注目に値する。しかし、この行動の起源はあいまいで、他人の親切心につけ込こもうとする輩が得をしかねないことを考えれば、なぜこういうものが生じたのか、なおさらわからなくなる。従来この問題の研究に使われてきたのは単純な「ゲーム理論」に基づくテストであり、人間やコンピューターに、一緒にゲームに参加している仲間を裏切るか、それとも手助けするかといった戦略から簡単な選択をさせる。しかし、こうしたモデルには現実社会にみられるような高度な複雑さが欠けている。  今回、従来よりも複雑・巧妙化した新しいコンピューターモデルによって、共同体意識が他人にも同じようにしっかりと身についているかどうかを自由に知ることさえできれば、何通りかの協力行動の戦略が自然発生的に生じうることが示された。このコンピューターモデルでは、仮想個体にあたる「エージェント」たちが仮想の部屋からなるマトリックスに住み着いており、休む・食べる・繁殖する・隣人を攻撃する、のいずれかを「選択」できる。  このモデルの開発者であるM BurtsevとP Turchinによると、ゲーム実行によって一連の異なる戦略が現れたという。従来のゲーム理論を実行した際にみられるような攻撃的な「タカ」や穏健な「ハト」と並行して、「カラス」や「ムクドリ」などほかの選択肢が生じたのである。「カラス」は、ほかの種類とはけんかをするが同類とは仲良くやり、「ムクドリ」は数の多さによって侵入者を撃退できることを承知したうえで、群れて暮らし、資源を共有する。

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