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素粒子物理学:発見から10年後にATLAS実験によって得られたヒッグスボソン相互作用の詳細マップ

Nature 607, 7917

素粒子物理学の標準模型は、宇宙を構成する既知の基本粒子と力を記述しているが、重力は例外である。標準模型の中心的な特徴の1つは、あらゆる空間を満たし基本粒子と相互作用する場である。この場はヒッグス場と呼ばれ、その量子励起は、スピンを持たない唯一の基本粒子であるヒッグスボソンとして現れる。2012年に、CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で行われたATLAS実験とCMS実験によって、標準模型のヒッグスボソンと矛盾しない性質を持つ粒子が観測された。以来、ATLAS実験では30倍以上の数のヒッグスボソンが記録され、はるかに精密な測定と理論の新たな検証が可能になっている。今回我々は、この大規模データセットに基づき、これまでにない数のヒッグスボソンの生成過程と崩壊過程を組み合わせて、ヒッグスボソンと素粒子の相互作用を精査した。強い力、電磁力、弱い力のそれぞれの担い手である、グルーオン、光子、WボソンおよびZボソンとの相互作用が詳細に調べられ、第三世代の3つの物質粒子[ボトムクォーク(b)、トップクォーク(t)、タウレプトン(τ)]との相互作用が十分に測定されるとともに、第二世代の粒子[ミューオン(μ)]との相互作用を示す兆候も明らかになっている。これら一連の検証によって、10年前に発見されたヒッグスボソンが理論予測と非常によく一致していることが明らかになり、標準模型を超える新たな現象の多くの模型への厳しい制約が得られる。

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