Nature ハイライト

物性物理学:低磁場における分数チャーン絶縁体

Nature 600, 7889

1988年、トポロジカル秩序や電荷分数化、その後の非アーベル統計といった新しい概念を導入したとして、分数量子ホール効果の発見にノーベル賞が贈られた。分数量子ホール効果を安定化するには高磁場が不可欠だが、この高磁場が、分数量子ホール状態が関与する応用の可能性に対する大きな障害となっている。今回A Yacobyたちは、モアレグラフェンにおいて、最低5テスラという低磁場で、分数量子ホール状態に似た分数チャーン絶縁体という状態を観測したことを報告している。分数量子ホール状態では、磁場の役割は電子バンド構造を分裂させて非ゼロチャーン数のランダウ準位を形成することだが、今回の磁場の役割はそうではなく、元から存在するチャーンバンドのベリー曲率を再分布させることである。これらの結果は、分数チャーン絶縁体をゼロ磁場で実現できる可能性を強く示唆しており、モアレ系におけるエニオン励起の探索や操作への道を開くものである。

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