Nature ハイライト

構造生物学:細胞の環境が核膜孔複合体の構造を決める

Nature 598, 7882

核膜孔複合体(NPC)は、核膜(NE)を横切って核と細胞質との間で積み荷を輸送するための太い管を形成する。この数十メガダルトンにもなる複合体は約30種類の異なるヌクレオポリンで構成されており、それらが中央の輸送チャネルの周りに3つの主要な基礎構造(内側の環、細胞質側の環、核質側の環)を作っている。今回我々は、クライオ集束イオンビームミリングを用いて調製したDLD-1細胞でクライオ電子線トモグラフィーを行い、ヒトNPCの本来の環境における構造モデルを作製した。その結果、精製したNEから得られたこれまでのヒトNPCの構造モデルと比較して、我々のモデルでは内側の環がかなり大きいこと、すなわち、中央のチャネルの体積が75%大きく、核質側の環と細胞質側の環の構造もそれぞれ異なっていることが明らかになった。さらに、内側の環複合体の周囲では、NPC膜が非対称になっていることも分かった。細胞質側の環と核質側の環の足場となるヌクレオポリンであるNup96を標的として分解することにより、中央のチャネルの調節や膜の非対称性の維持においてそれぞれの環が相互に依存していることが明らかになった。これらの知見から、NPCが本質的に柔軟性を備えていることが明確になり、NPCの大きさや構造に細胞の環境がかなり大きな影響を及ぼしていることが示唆される。

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