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免疫学:リンパ節の単球由来S1Pは免疫応答を調節する

Nature 592, 7853

脂質であるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)は化学誘引物質で、S1Pの濃度が他よりも低い組織中の細胞を誘導して、S1P濃度が高い循環液中へと移動させる。例えば、S1PはT細胞が最初に活性化されたリンパ節から出てリンパ液に入るように誘導し、T細胞はそこから血液に達して、最終的には炎症を起こした組織にたどり着く。T細胞は主に、S1P受容体1を用いてS1P勾配に従って移動する。最近の研究で、定常状態でS1P勾配が確立される仕組みが報告されたが、疾患の際のS1Pの分布、あるいはS1P濃度の変化が免疫応答にどのように影響するかについてはほとんど分かっていない。今回我々は、リンパ節のS1P濃度が免疫応答の際に上昇することを示す。このS1Pの重要な供給源は、炎症性単球を含む造血細胞であることが分かった。これは、内皮細胞がリンパ球にS1Pを供給していることを考えると予想外の結果であった。炎症性単球は、このS1Pを供給するために初期活性化マーカーCD69を必要としており、その理由の1つはCD69の発現がS1pr5(S1P受容体5をコードする)のレベル低下に関連することにある。CD69は「正当防衛」シグナルとして機能し、S1Pの受容体群と勾配の両方を調節することにより、炎症部位に免疫細胞をとどめている。さらに、リンパ節でのS1Pレベルの上昇は、T細胞のリンパ節停留時間を長くし、マウスの実験的自己免疫性脳脊髄炎の重症度を悪化させた。この知見から、リンパ節に留まる時間の長さがT細胞分化を調節する可能性が示唆され、またS1Pシグナル伝達を標的とする薬剤の新しい使用法が示された。

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