Nature ハイライト

構造生物学:SARS-CoV-2の複製

Nature 584, 7819

コロナウイルスは、そのゲノムの複製と遺伝子の転写にRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を用いている。RdRp複合体は、レムデシビルのようなヌクレオシド系阻害剤の標的である。今回P Cramerたちは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のRdRpについて、複製中の酵素を模倣した活性型のクライオ電子顕微鏡構造を決定している。RdRpのこの構造は、ウイルスタンパク質のnsp12、nsp8、nsp7、それに二本鎖RNAの2回転分を超える断片からなる。得られた構造からは、nsp12の活性部位についての知見がもたらされた他、nsp8中のヘリックス伸長部分が離れていくRNAに沿って伸びて、長いRNAゲノムの複製が終わらないうちにRdRpが解離するのを防止している可能性が明らかになった。

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